(ブルームバーグ): 22日の日本市場では株式相場が続落し、東証株価指数(TOPIX)と日経平均株価は約3週間ぶりの安値を付けた。米国で半導体などのテクノロジーや景気敏感株が下落した流れが波及し、電機や精密機器株中心に売られた。米国のバイデン大統領が大統領選からの撤退を表明して投資家は様子見姿勢となり、買いが入りにくかった。

  円相場は株安によるリスク回避の動きもあって、午後に入り対ドルで156円台半ばへ上昇。債券相場は中期債対象の流動性供給入札が弱めの結果となり、小幅安。

  バイデン米大統領は21日、X(旧ツイッター)への投稿で、2024年大統領選から撤退すると明らかにした。その上で、ハリス副大統領を民主党の大統領候補として支持することを明らかにした。大統領選の投票まで4カ月を切り、民主党全国大会を数週間後に控えての決断となった。

  東海東京インテリジェンス・ラボの柴田秀樹金利・為替シニアストラテジストは、バイデン氏の撤退は織り込み済みで直接的な影響は小さいとみる一方、「トランプ氏が優位とも限らず、民主党の副大統領候補も含めて今後の展開を見ないと消化できない」と指摘した。

株式

  東京株式相場はTOPIXと日経平均がともにおよそ3週間ぶりの安値を付けた。米国で半導体などテクノロジー株や景気敏感業種が下落した流れが波及し、電機や精密機器、機械株などの下げが目立った。非鉄金属や鉄鋼など素材株も安い。あす以降、日本の主要企業の決算発表が本格化するほか、バイデン米大統領の大統領選挙からの撤退を受け、投資家の様子見姿勢が広がった。

  TOPIXを構成する2136銘柄中、下落は1682、上昇は378。東証33業種は29業種が下落し、上昇は陸運や食料品など4業種。売買代金上位ではディスコや日立製作所、アドバンテスト、太陽誘電、HOYAが安い。半面、運賃改定を国土交通省に申請し、アナリストがポジティブ視したJR九州は大幅高。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は「トランプ相場一色だったが、今週からは日本企業の決算発表が本格化するため、焦点は業績に移る」と指摘。バイデン米大統領の撤退についても「行き過ぎたトランプラリーの巻き戻しは今後出てくる可能性はある」とした一方、米大統領選に向けボラティリティーが非常に高い中での動きで、サプライズはないとの認識を示した。

外国為替

  東京外国為替市場の円相場は一時1ドル=156円台半ばに上昇。バイデン米大統領の撤退表明については驚きはないとの受け止めが多かったが、午後2時過ぎから円を買い戻す動きが強まった。日本株の下落を背景にリスク環境が悪化しており、低金利の円を売って高金利通貨を買うキャリー取引の巻き戻しも警戒された。

  大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストは、欧州勢が参加してくる午後の時間帯で「トランプトレードを解消するような動きが起こっているのかもしれない」と分析。市場のリスクセンチメントが悪化する中、「リスクオフ的な円買いが入ってもおかしくはない」と述べた。

  オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは、アジア株がほぼ全面安の状況となり、「リスクオフに伴って円売りポジションの巻き戻しの動きになっている」と話していた。

  米商品先物取引委員会(CFTC)が公表した非商業部門の円の売り越し幅は16日時点で15万1072枚と、9日時点の18万2033枚から約3万枚の大幅縮小となった。

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債券

  債券相場は小幅安。中期債対象の流動性供給入札が弱めの結果となり、売りが優勢となった。半面、バイデン米大統領の撤退表明で、インフレや財政拡大による米長期金利の上昇を狙ったトランプトレードが巻き戻されるとの観測は相場を下支えした。

  りそなアセットマネジメントの藤原貴志債券運用部長兼チーフファンドマネジャーは、流動性供給入札は事前予想に比べて弱めだったと指摘。「残存4年前後の国債への需要がそれほど強くなかった。来週に日銀会合を控えてカバーする必要がないと判断したのではないか」と述べた。

  一方、バイデン氏撤退の影響は、きょう材料が出たばかりなので織り込むには早過ぎるとしながらも、「トランプ氏優位という情勢だったのがやや落ちており、その影響はある」とみていた。

  流動性供給入札(残存期間1年超5年以下)の結果によると、最大利回り格差がマイナス0.008%、平均利回り格差はマイナス0.012%。応札倍率は3.26倍と前回同ゾーンの入札があった5月2日(3.6倍)から低下した。  

--取材協力:長谷川敏郎、酒井大輔.

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