宮城県の総人口は2020年時点で230万人ですが、少子高齢化に伴い今後30年で50万人減ると試算されています。それに伴い労働力の中心となっている15歳から64歳の生産年齢人口もこの30年で約44万人減る見込みです。単純に計算すると毎年約1万5千人の労働力が減っていくことになります。こうした中で注目されているのが外国人労働者です。県内の外国人労働者は年々増えていて、去年10月時点で1万6千586人、雇用する事業者は2872カ所と、7年前と比べるといずれも2倍以上になっています。
県内でも外国人労働者を貴重な戦力として迎えるため環境を整える企業が増えています。労働力としてだけではなく、企業の生き残り策としても重要な意味があるようです。

松島町で創業90年近い歴史をもつこちらの旅館。松島湾が望める景色や良質な温泉が人気で、コロナ禍を経て客足も順調に戻ってきています。

「こちら恐れ入ります郵便番号とご住所、ご記入お願いします」
流暢な日本語で接客をこなすのは、韓国出身のイ・ドンヒョクさん(26)です。
中学生の時にアニメを通して日本に興味を持ったイさん。現地で日本語を学び、高度人材としての就労ビザで来日し、去年4月にこの旅館に就職しました。フロント業務から料理の配膳までこなし厚い信頼を寄せられています。

小松館好風亭 小松篤司社長
「性格も真面目ですし、ユーモアもあるし、とても良い青年です。期待の若手でとても頑張ってくれています」

こちらの旅館が外国人の雇用を進める理由、そこには慢性的な人手不足があります。

小松館好風亭 小松篤司社長
「旅館業界は人手不足が続いておりまして、人材確保にどこの旅館も大変なんです。そんな中で外国人スタッフに来てもらって大変助けられています」

実際に人手が足りず、予約を受けられないケースもあるといいます。そうした中、イさんは韓国語に加えて英語も話せることから人手不足を補う以上の存在となっています。

小松館好風亭 小松篤司社長
「もちろん人手不足はあるんですけど、確実にインバウンド客が増えていますので、外国人をおもてなしするために外国人スタッフを引き続き採用していきたいと思います」

一方、外国人が働きやすい環境を整備することで働き手の確保につなげている企業も。農業生産法人「舞台ファーム」が3年前に美里町に建設した野菜工場。東京ドームと同じ面積で種まきから栽培までをコンピューターで管理。天候に左右されることなく1日に約4万個のレタスを生産しています。ここで働く約50人のうち3割ほどが東南アジアを中心とした20代から30代の外国人です。

スニルさん・29歳(ネパール)
「良い将来のため、日本は安全な国なので。日本人は優しい。良い経験のためです」
ライリティックさん・28歳(ネパール)
「日本は世界の中でも技術的に一番良い国だから、日本の技術に慣れて、できたらネパールに帰って同じくらいの会社を開きたい」

技術の習得に加えて、収入面でも母国に比べて年収で60万円ほど多いといいます。若く志を持って仕事をし、雇用側は「工場になくてはならない存在だ」といいます。

舞台ファーム 引地みつ恵さん
「社員が少なくてパートとか派遣も頼っていたんですけど、今はネパール、インドネシアの人たちが主に動いていただいているので、こちら的には本当に助かります。同じ社員っていう感じより家族的なところがある」

こちらの会社では外国人の雇用を進める上で力を入れていることがあります。
この日は昼の休憩時間を利用してランチパーティーを開催。言語も文化も違う異国の地で働く人たちに共に食事をする場や旅行など仕事以外で交流する場を設けることで、職場に溶け込みやすい雰囲気を作り、一人一人が能力を発揮できるようにすることが狙いです。
ランチ会を主催した舞台ファーム未来戦略部 ロ・エトウさん(中国)
「皆さん工場で働いているけど、作業だけで普通のコミュニケーションは取れていないので、寂しいかなと思ったので一緒に楽しみながら話せる場を作ろうと思った」

さらに外国人労働者向けの寮も完備。台所などは共用ですが、ベッドと収納が付いた個室です。現在はベトナムとインドネシアから来た14人が生活しています。将来、母国ベトナムでコーヒーショップを開業する資金を貯めるため、去年7月からここで働くチャンさん。
休みの日などはここでコーヒーを入れて同僚たちと談笑するのが息抜きになっているといいます。
チャンさんの部屋には日本で買いそろえたという化粧道具や日本語の参考書がびっしり。

グエン ティ チャンさん・24歳(ベトナム)
「働くのが面白いです。みんなも面白いから優しくて…エアコンもあるからベッドもあるし、部屋もきれいだし、それがうれしかったです」

舞台ファーム広報 西古紋さん
「彼らのようにかなり若くて前向きなモチベーションを持っている方々が会社に入っていただくということ。これがさらに増えていくということで日本人とか外国人関係なく前向きなメンバーが増えてくる。こういったシナジー効果、さらに(採用を)進めていてくつもりです」

増える外国人労働者。県内を中心に全国で外国人労働者の人材派遣を手がける会社は「単なる労働力の穴埋めではない」と話します。

東洋ワーク 里美誠取締役
「水産加工品をじゃあベトナムで販売しよう、台湾で販売しよう、それのきっかけとなったのが外国人の担い手だったり労働者だったりするケースはありますので、アプローチの仕方として労働力の減少を外国人で補うという。どちらかというと入ってきたときに社内の活性化がポイントになると思います」

その上で「グローバル化」と「人口減少」が進む中、外国人の雇用は企業にとって差し迫った重要課題だと指摘します。

東洋ワーク 里美誠取締役
「高齢化が進んでいく中で、海外の方々を受け入れられる土壌、基盤を持っている会社が優位に立つというふうに思いますので、ここを作らない選択は私はないのかなと思っています」

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。