(ブルームバーグ): ここ数日の急激な上昇により、円は下落トレンドを脱したように見える。多くのストラテジストは、円にはさらに上昇する余地があると指摘する。 

  円相場は17日、6月以来初めて1ドル=156円台を突破。日本の通貨当局による介入観測が円高を加速させた先週から4%近く上昇した。

  米連邦準備制度理事会(FRB)が早ければ9月にも利下げに踏み切ると投資家が確信する中、円の反発は今年最大のマクロ・ショート・トレードの一つを脅かしている。トランプ前米大統領や有力な日本の政治家の為替レートに関する批判的な発言のほか、今後数カ月で日本の金利が上昇するとの期待がこうした動きを支えている。

  1兆2300億円(79億ドル)を運用するしんきんアセットマネジメント投信の加藤純チーフマーケットアナリストは「円安は終わった」と指摘。「米国のインフレ鈍化と労働市場の冷え込み、景気減速により日米実質金利差が顕著に縮小している」と語る。

  トランプ氏はブルームバーグ・ビジネスウィーク誌のインタビューで、米国は円安と元安により「大きな通貨問題」を抱えていると語った。これにより、同氏が11月の大統領選で勝利すれば、ドル安政策を取る可能性が高まった。

  一方、河野太郎デジタル相は17日、ブルームバーグテレビジョンで、円の価値を高め、エネルギーや食料品のコストを引き下げるために政策金利を引き上げるよう日本銀行に求めた。河野氏は、円が安くなれば輸出の増加につながるが、多くの日本企業は海外に生産拠点を置いており、日本にとっての恩恵は限られていると述べた。

  今回の円の上昇は、通貨防衛を続けなければならないという日本の当局の当面の懸念を和らげることにもつながるかもしれない。

  ブルームバーグの試算によると、政府・日銀は11日に約3兆5000億円、翌12日にはさらに2兆1000億円程度の円買い介入を行ったとみられる。これは4月下旬から5月上旬にかけて実施された多額の介入に続くものだ。

  もっとも、米大統領選や金利の乖離(かいり)といったリスクがなお潜んでおり、トレーダーは厄介な道を進まなければならない。また、円相場が最悪期を脱した可能性が高いということに、誰もが同意しているわけではない。

  野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは「円相場の潮目が変化したかどうかについては、今後数カ月のスパンで見ればイエスだが、より長期で見る場合は判断は時期尚早だ」と語る。

  円は対ドルで18日、一時155円38銭と約1カ月ぶりの水準まで上昇し、午後2時半時点では156円30銭前後で推移。それでも主要10通貨の中ではなお最弱で、年初から10%ほど下落し、1980年代以来の安値圏にある。

--取材協力:日高正裕、船曳三郎.

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