前日に比べ1011円下落して終了した日経平均株価=19日午後、東京都中央区(岩崎叶汰撮影)

19日の日経平均株価は急落し、3月22日につけた年初来最高値(4万888円)から3800円超も下落した。気になるのは、株高要因とされる円安基調が続いているにもかかわらず、株価が冴えないことだ。投資家の不安心理の底流には、米国のインフレがいつまで続くのかという疑問がある。中東の地政学リスクの高まりが、その不安に拍車をかけている。

日本株も円も安く

19日の東京株式市場は朝方から軟調だった。半導体需要が弱まるとの懸念から、半導体株に売り注文が殺到した。

「イスラエルがイランに反撃した」との一報が入ると、日経平均は一時、前日終値からの下落幅が1300円を超えた。「有事の円買い」により、円相場は1ドル=153円台半ばまで円高に傾いた。

円相場はその後、154円台前半まで押し戻されたが、日経平均は今年最大の1千円超の下げ幅で取引を終えた。

中長期的な視点で投資家が最も気にするのは、米国のインフレ動向だ。労働需給の引き締まりから賃金が上昇し、サービス価格は高いままだ。このため米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げの先送りが濃厚となっている。

原油高で米利下げ遠のく

中東情勢の悪化は原油高を通じて、米国のインフレにも影響する。インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは「米国では今度はモノの価格も上昇するとの懸念も出てきた。不確実性はより高まった」と分析する。

市場の一部には「利上げ」観測まで飛び出し、円安の主因である日米金利差が縮小する見通しは立たないままだ。生活者の負担感が増せば、日本銀行への利上げ圧力は高まる。

日銀の植田和男総裁は18日、米ワシントンでの記者会見で、円安の輸入物価への影響について「無視できない大きさの影響が発生した場合は、金融政策の変更もあり得る」との認識を示した。(米沢文)

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