15日、豪雨に襲われた長崎市では、20メートルにわたって道路が崩れ、危険な状態になりました。

いま、相次いでいる、道路の陥没。

専門家からは、最近の「猛暑」が影響しているという指摘もあります。背景を取材しました。

■1年間に1万件…「道路の陥没」 夏に突出して増加する傾向

【記者リポート】「長崎市です。大雨の影響でしょうか。道路の一車線が陥没しています」

アスファルトが崩れ、土砂がむき出しとなった道路。

15日、記録的な大雨が降った長崎市では、川沿いを通る道路の片側が20メートルにわたって崩れ、川に土砂が流れ込みました。

さらに12日には、広島県尾道市でも道路が陥没。

実は道路の陥没、年間1万件ほど報告されているということです。

その代表的な仕組みについて、専門家はこう話します。

【芝浦工業大学 土木工学科 稲積真哉教授】「通常道路の下には、下水道管、それから水道管、他の色々な埋設物も入っている。月日が流れることでどんどん劣化していく。周りの土が、漏れ出した水によって、えぐられていく。いわゆる空隙・隙間ができてしまっている状態になる。あるところで、ガバッと落ちてしまう。これが道路陥没の主な事例」


また稲積教授は、道路の陥没は、夏に突出して増加する傾向がありますが、道路の陥没には雨だけではなく、「暑さ」も影響していると指摘します。

【芝浦工業大学 土木工学科 稲積真哉教授】「アスファルトは高温、熱によって溶けてしまう性質を持っている。その結果その上に、例えば少し重たいものが乗ったら、アスファルトごと道路が崩れ落ちてしまう」


■住民の生活にも影響 工事現場は海と急斜面に面した厳しい環境

道路の陥没は、住民の生活に長期間影響を与えることもあります。

【記者リポート】「南あわじ市の県道ですが、通行止めとなっています」

2023年9月、6時間で179ミリの雨量を観測した南あわじ市では、県道で道路の陥没が発生し、パトカーが穴に落ちる事故もおきました。


およそ10カ月経った16日でも、3キロほどの区間が通行止めとなっていて、地元の住民からは、戸惑いの声が上がっています。

【地元住民】「今まで通れた道が通られへんから、来るときのアクセスが遠回りになって困っている」

周辺は、淡路島を自転車で一周する「アワイチ」のコースになるなど、観光面でも人気のエリア。

キャンプ場を営む男性は、周辺のお店にも影響が出ていると話します。

【キャンプ場を営む人】「海岸沿いを1周回るというのをバイクや自転車の方が楽しみにしているところを、いい景色の場所を見ずに迂回してしまっている状況。閉店まではいってないけど、お店はちょっとお休みしているとか、かなりダメージは受けていますね。早く復旧してもらえることを、みんなで願っていますね」


一体なぜ、復旧にこれほど時間がかかっているのか?

道路を管理する洲本土木事務所に、工事現場を案内してもらうと…。

【洲本土木事務所道路第2課 藤井健夫課長】「ちょうど谷になっているところで、そのど真ん中くらいが陥没したところ」

道路の土台となるコンクリートを新しく積み上げる前の段階として、壊れた壁を撤去する作業が行われていました。

【洲本土木事務所道路第2課 藤井健夫課長】「海からいくらか土を盛っているが、ブロック下から10メートル(の高さにある)道路まで上げるのは、なかなかの難工事です」

山側には急斜面、その反対側には海があるという、厳しい環境。

さらにこれからの時期は、台風などによるさらなる被害がでる可能性もあり、安全対策をとりながらの作業には時間が必要ということで、工事は年末までかかる見通しです。

【洲本土木事務所道路第2課 藤井健夫課長】「(工事が完了したら)耐震的にもいいものができるので、ここについては同じような災害が起こらないように、安全なものになる。引き続きご協力いただきたい」


専門家は、もはやどんな場所にも道路陥没のリスクはあると指摘します。

【芝浦工業大学 土木工学科 稲積真哉教授】「日本全国の道路の下の地盤は、大なり小なり穴が確認されている。陥没が起こる可能性は(どこでも)あると理解した方がいいと思います」

一度発生すると、影響が長期化することも多い道路の陥没。
猛暑といわれる2024年の夏、さらなる警戒が必要になりそうです。


■陥没の予測は困難 水道管の老朽化が原因の場合も「対応には時間とお金がかかる」

各地で道路の陥没が相次いでいますが、夏の大雨、暑さの影響もあるということです。

道路の陥没の発生件数をまとめたものを見てみると、2020年度で9124件。年々増えており、2022年度には1万548件という状況です。

芝浦工業大学工学部の稲積教授によると、“道路の陥没”は「今後さらに全国で増加する恐れも」あるそうです。

陥没を予測することはできるのでしょうか?

稲積教授は「陥没前に地中から音が出ることも多いが、聞き分けるのは非常に難しい」と指摘していて、「陥没を予知するのは困難ではないか」とみています。

そのうえで、「道路は完全なものではない、危険性があるという認識」を持つことが大事だそうです。

newsランナーのコメンテーターで大阪大学大学院の安田洋祐教授は、「ピンポイントでの予測が難しいということだと思うのですけれども、ハザードマップみたいに陥没しやすい所、しにくい所がある程度分かれば、大雨が降っているときに陥没しやすそうなところは避けるという取り組みができるかもしれません。また大きな陥没が起きてしまって、長期間アクセスできないような事態に備えるために、ドローンを使って緊急的な物資を支援できるような体制を作っていくのも、直接の解決策ではないのですけれども、広い意味での陥没対策になるのかなと思います」と話しました。

年々、陥没が増えているという状況について、関西テレビの神崎博報道デスクはこのように解説します。

【関西テレビ 神崎博報道デスク】「実は都会と地方で、ちょっとメカニズムは違うんですけど、都会の場合は道路の下に上下水道管が通っています。
それが老朽化して水漏れが起き、漏れた水によって土が削られて、大きな空洞ができ、アスファルトが柔らかくなって、陥没が起きてしまうということがあります。上下水道管を新しくすることは大変で、すでにいろいろな所で新しくする作業も始めているのですが、すごく手間とお金がかかるので、なかなか進んでいないというのが現状です。
下手をすると何十年先まで予算を組んでやっても終わらないというところもあるので、新しい技術を検討するなど、どれだけのスピードでできるかが課題です」

猛暑はこの後も続きますし、そして梅雨が明けても台風シーズンが来て、大雨のリスクが高まっている状況です。引き続き警戒が必要です。

(関西テレビ「newsランナー」2024年7月16日放送)

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