インターネットを利用した消費は、購入する対象を拡大させながら生活に定着してきた。明治安田総合研究所経済調査部の木村彩月(さつき)エコノミストの分析によると、新型コロナウイルス禍を経て台頭したサービスの定着や機器の発達が背景にあるという。その結果、利用者の年代も広がってきている。
総務省の家計消費状況調査によると、2023年のネット消費額は1世帯当たり年27万6253円。15年と比べて約2・5倍に拡大した。
その内訳として約4倍も伸びたのが「食料」だ。コロナ禍を機に普及したネットスーパーやフードデリバリー(出前)が要因とみられ、フードデリバリーだけなら約12倍にも及ぶ。ダウンロードなどで利用する電子書籍や音楽、映像といった「デジタルコンテンツ」も約5倍に伸びている。
これらは幅広い年代に波及している。
世帯主の年齢階層別(2人以上の世帯)に1世帯当たりのネット支出額を分析すると、各年代で15年を100として23年と比較した場合、最も伸び率が高かったのは3・4倍の「29歳以下」。それに続くのが「70歳以上」と「60~69歳」だった。
同じ期間について、年齢階層別にネット消費を利用している世帯の割合を比較すると、「60~69歳」は16・2%から39・2%に増加。「70歳以上」なら10・6%から29・2%に増えた。ネット消費が高齢世帯の生活にも溶け込んでいる実態が浮かび上がってくる。
その背景にあるのはスマートフォンの普及だ。スマホからのインターネット利用率は、同じ期間で「60~69歳」は24・2%から75・6%に拡大。「70~79歳」も7・4%から47・0%に大きく上昇した(総務省通信利用動向調査)。木村氏は「高齢層の中でも、実店舗に出向かず、インターネット上で商品を選択・購入する人が増えている様子がうかがえる」と分析している。【嶋田夕子】
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