(ブルームバーグ): パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は、4-6月(第2四半期)の経済データで、インフレが当局目標の2%に向かって低下しているとの自信を政策当局者が深めたと述べた。近いうちの利下げに道を開く可能性がある。

  パウエル議長は、先週発表された一つを含む直近三つのインフレ指標を挙げてこう述べた。ただ、利下げのタイミングについて具体的なメッセージを送る意図はないことも明確にした。また、インフレ抑制に引き続き重点を置くとともに、労働市場への潜在的リスクを強調する方向へのトーンのシフトを強固にした。

  議長は15日、首都ワシントンのエコノミック・クラブでデービッド・ルーベンスタイン氏のインタビューを受け、「1-3月(第1四半期)には自信を高めさせるものは何も得られなかった。だが、先週発表された一つを含む第2四半期の三つの指標で、幾分自信は深まった」と語った。ルーベンスタイン氏は投資会社カーライル・グループの共同創業者。

ワシントンのエコノミック・クラブでインタビューに答えるパウエルFRB議長Source: Bloomberg

  パウエル議長は「インフレが鈍化し、労働市場は実際に冷えてきた。われわれは両方の責務に目を向けるつもりだ」とし、「これらのバランスはかなり改善している」と発言した。米金融当局には物価安定と最大限の雇用の促進の二つの責務がある。

  新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)からの回復初期に比べ、労働市場は「もはや過熱していない」と述べ、労働市場が「予想外に軟化」した場合も、金融当局が対応する理由になり得るとの見解を示した。

金利見通し

  今月30、31両日の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では金利据え置きが見込まれている。トレーダーは9月を皮切りに年内に少なくとも2回の利下げを予想している。

  ネーションワイド・ミューチュアル・インシュアランスのチーフエコノミスト、キャシー・ボストジャンシク氏は金融当局者について、「彼らは間違いなくインフレを抑制したい考えだが、やり過ぎればリセッション(景気後退)を招きかねないとの認識が深まっている」との分析を示した。

  パウエル議長は、13日に起きたトランプ前大統領の暗殺未遂事件に対する市場の反応に関しても質問を受けた。議長は暴力を非難するとともに、トランプ氏のけががさらに深刻でなかったことに感謝すると答えた。市場への影響については発言を控えた。

中立金利

  議長はこのほか、景気を加速することも抑制することもない中立金利に関する見解も明らかにし、2008-09年の金融危機とパンデミックの間の期間に比べ、中立金利が上方にシフトした公算が大きいと語った。

  「危機と危機の間の期間に比べて中立金利は恐らく上昇したと見受けられ、このため金利は高めとなるだろう」と述べた上で、現行の政策は「景気抑制的」だが「極めて景気抑制的」ではないと指摘した。

  中央銀行の独立性について問われた議長は、政策策定に当たって政治的な考慮を避けることに米金融当局がコミットしている点をあらためて強調した。26年の任期満了まで議長職を務める意向を表明する一方、再度指名された場合に職にとどまるかどうかは発言を控えた。

原題:Powell Says Recent Data Raise Confidence Inflation on Path to 2%(抜粋)

--取材協力:Will Kubzansky、Catarina Saraiva.

(発言を追加するなどして更新します)

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