(ブルームバーグ): 京都フィナンシャルグループ(FG)の土井伸宏社長は、同社が持つ政策保有株について「今からでも買い増したいくらいの銘柄ばかり。引き続きできる限り保有したい」と述べ、大幅な削減は考えていないとの認識を示した。

  資本効率が悪化するなどとして、金融機関や事業会社が抱える政策株に対する投資家の目線は厳しさを増している。政策株削減を加速させる企業が増える中、京都FGの取り組みは、こうした動きとは一線を画した対応となる。

  同社は3月末時点で約1兆1100億円の政策株を保有しており、保有銘柄上位には任天堂や二デック、村田製作所、京セラなど京都に本社を構える有名企業が並ぶ。評価益は9700億円と8日時点の京都FGの時価総額約8300億円を上回る水準だ。足元での含み益は1兆円を超えたという。

  土井社長は「京都銘柄を全部持ち続けるということでなく、見直す部分については見直す」としながらも、「単なる持ち合いとして持っている株ではなく、創業当初から投資しており、今後も成長期待ができる企業がほとんどだ」として保有する意義を説明した。

海外投資家と積極対話

  6月27日に開催された株主総会では、土井社長の取締役再任への賛成率は75%と前年の62%から上昇した。堅調な業績にもかかわらず、巨額の政策株を要因に近年賛成率が低迷していたが、投資家から一定の理解を得る結果となった。

  総会前に米議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は、政策株の多さなどを理由に、同氏の取締役選任議案への反対を推奨していた。一方、過去2年にわたり、特別配当などを求めていた英ファンドのシルチェスター・インターナショナル・インベスターズは今回、株主提案を見送っていた。

  土井社長は賛成率が改善した背景について、海外投資家との積極的な対話の結果、政策株の意義やメリットについて理解を示してくれるところがあったと説明。今後も引き続き、粘り強く国内外の投資家に政策株の意義とメリットを訴えていくと述べた。また「アジアや中東などでわれわれの考えに賛同いただける投資家を探し、投資してもらえるような活動をしたい」との考えも明らかにした。

  一方、国内の資産運用会社やその他の機関投資家に対しては、より対話の必要性を感じていると述べた。最近では、政策株の保有額が純資産の2割以上になると経営トップの選任に反対するという方針を議決権行使基準に取り入れる運用会社が増えている。京都FGの場合、純資産の9割超に相当する。

  土井社長は「金太郎あめみたいにどこの基準も一律。それは仕方ないと思うが、特異性というか多様性などをプラスに見てもらえない」と批判。数値基準に基づいた議決権行使について「自主的な判断がないことにフラストレーションを感じている」との不満を示した。

  同社は2022年に政策株の縮減方針を公表し、3年程度で160億円(簿価ベース)を削減するとした。ただ、株高を受けて時価ベースでの残高は増えている。中間決算発表時期に新たな縮減方針を示したいとしている。

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