財務省の神田真人財務官は2日、日本経済の課題を巡る私的懇談会の報告書を発表した。輸出産業の国際競争力低下や、新しい少額投資非課税制度(NISA)の影響もあって個人金融資産の海外流出が増加している現状を示した上で、こうした状況を打破するため、産業の新陳代謝や成長分野への労働移動の円滑化を提言した。
報告書は「国際収支から見た日本経済の課題と処方箋」と題した懇談会の議論をまとめた。ここ数年の円安進行は日米の金利差のほかに、海外との資金のやり取りを示す国際収支の構造変化が背景にあるため、学者やエコノミスト20人を集めて議論してきた。
2023年度の国際収支(速報)は経常収支が25兆3390億円の黒字となり、過去最大だった。ただし、内訳を見ると、製品の輸出入の収支を表す貿易収支と知的財産権などのサービス収支の合計は6兆230億円の赤字だった。
報告書は、自動車産業に匹敵する貿易黒字の担い手が不在の中、さらなる発展が見込まれるIT分野で海外プラットフォーマーに頼り、利用料の支払いで「デジタル赤字」が拡大していると指摘。日本企業が海外での事業や投資で得た利益の多くは国内にもたらされることなく海外で再投資されており、国内投資が低迷する現状を問題視した。
エネルギーの輸入依存も貿易赤字の一因になっており、報告書は「安全確保を大前提に原発の再稼働を進めることが喫緊の課題」と踏み込んだ。【加藤美穂子】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。