日本財団と東京大は21日、日本最東端の小笠原諸島・南鳥島(東京都)沖合の深海に希少金属(レアメタル)を含む2億トン以上のマンガン団塊が密集していることが分かったと発表した。日本の排他的経済水域(EEZ)内にあり、2025年にも商業開発を目指した採鉱の実証実験を始める。
同島周辺では16年に東大などの研究チームが概略調査でマンガン団塊の存在を確認しており、今年4~6月に海底資源調査船を用いてより詳しく調査した。同島周辺の海域1万平方キロで水深約5200~5700メートルを遠隔操縦無人潜水艇などで調べた結果、約2・3億トンのマンガン団塊が海底一面に広がっていた。採取したマンガン団塊を分析すると、この海域でのレアメタルの総含有量はコバルトが61万トン、ニッケルが74万トンと推計され、それぞれ日本の消費量の75年分と11年分に相当するという。
マンガン団塊は、鉄やマンガンの酸化物を主成分とする黒褐色の海底鉱物資源で、拳ほどの大きさで球形をしている。岩石や死んだ魚類の歯などを核に、コバルトやニッケルといったレアメタルを含む金属成分が長い時間をかけて年輪のように付着してできると考えられている。
レアメタルは蓄電池などに必要不可欠で、電気自動車やスマートフォンの普及で世界的に需要が増加している。一方で産地に偏りがあるため日本はほぼ全量を輸入に頼っている状況だ。経済的重要度が増す中、レアメタルの安定供給の確保は経済安全保障上でも喫緊の課題とされる。
25年からは海外の採鉱船などと連携を図りながら、商業開発を見据えた実証実験を3年ほどかけて実施する。併せて産学官の共同事業体を同財団を中心に作り、商用化を推進していく計画だ。都内で記者会見した笹川陽平・同財団会長は「無資源国である日本で心躍る大きな発見だ。環境にも十分配慮しながら、日本の経済発展に大きな役割を果たしたい」と話した。【露木陽介】
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