日銀は14日の金融政策決定会合で、国債の買い入れ額を減らす方針を決めた。事実上、保有資産を段階的に縮小する量的引き締めを始める。具体策は先送りし、7月末の次回会合で今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定する。3月に決めたマイナス金利解除など一連の異次元緩和策の終了に続き、金融政策の正常化を進める。
日銀は現在、銀行や保険会社などが持つ国債を月間6兆円程度購入している。2023年末時点の保有残高は600兆円に迫り、発行残高全体に占める比率は5割近くに上る。買い入れを減らせば、満期を迎えた分の償還ペースが買い入れを上回ることになり、保有残高は緩やかに縮小する見込み。植田和男総裁は14日の記者会見で「望ましい水準に到達するまでにはかなりの時間がかかる」として、量的引き締めが一定期間続くとの見通しを示した。
日銀の国債買い入れが減ると、債券市場で取引される国債の価格が下がり、長期金利は上昇する可能性がある。そのため減額計画の策定に先立ち、日銀は銀行や証券会社、保険会社などの機関投資家から、日銀による国債買い入れの今後の運営について意見を聞く。植田氏は「市場に不安定な動きが起きることは避けたい。判断を的確にするために市場参加者の意見を聞きたい」と説明した。
一方、国債購入の減額を既に織り込んでいた市場では、今回の会合で具体的な減額幅が示されるとの見方が広がっていたため、減額が予告にとどまり「肩すかし」(エコノミスト)にあった形。当面は大規模な買い入れによる低金利環境が続くとの見方が強まって、円相場は一時1ドル=158円台を付け、日銀の発表前から1円程度下落した。
外国為替市場では、これまで低金利の円が売られ、高金利のドルが買われることで円安・ドル高が進行してきた。そうした中、日銀は今回の会合で追加利上げは見送り、0~0・1%程度の政策金利(無担保コール翌日物)を据え置いた。賃金や物価、経済情勢を見極める必要があると判断した。
植田氏は足元で続く円安基調について「物価の上振れ要因であり、十分に注視している」と警戒感を示した。次回会合で追加利上げに踏み切る可能性を問われると「経済・物価情勢に関するデータや情報次第で、当然あり得る」と述べた。【浅川大樹】
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