国山ハセンさんが新著『アタマがよくなる「対話力」』にこめた想いとは(flier提供)

<人生を変えたのは「読むたびに血がたぎる自己啓発書」──国山ハセンさんが、新著『アタマがよくなる「対話力」』にこめた想い>

TBSにてアナウンサーとして『王様のブランチ』『ひるおび』『news23』など様々な番組で活躍してきた国山ハセンさん。2023年1月に独立し、ビジネス映像メディア「PIVOT」に参画し、プロデューサー兼MCへ転身されました。

そんなハセンさんが新著『アタマがよくなる「対話力」』(朝日新聞出版)にこめた想いとは? PIVOTの企画の舞台裏、ハセンさんの人生に影響を与えた本についてもお聞きします。(※この記事は、本の要約サービス「flier(フライヤー)」からの転載です)

対話には「人生をクリエイトする力」がある

──ハセンさんが『アタマがよくなる「対話力」』を書かれた背景は何でしたか。

出版社から本を書かないかとお話をいただきました。テーマについて話し合うなかで、相手から学びを引き出す「対話」の力にフォーカスするのはどうか、とアイデアが湧きました。

アナウンサー時代に培ったスキルや日々のコミュニケーションで意識している点なら表現できるものも多い。そして、私自身、番組の企画からMCまで関わりたいという思いで、TBSからPIVOTに転職しキャリアを前に進めていった経緯もあります。それらをうまく組み合わせて言語化したのが、『アタマがよくなる「対話力」』です。

対話力の本というと、聞き方や発声など、テクニック的なものが中心になることが多いように思います。ですが、私がそれ以上に大事だと考えているのは、「この対話を通じて相手にどんな気持ちになってもらうか?」。これまでも、社内外の人と対話を通じて信頼関係を築いたことが、キャリアを切り拓くきっかけになっていました。つまり、対話には「人生をクリエイトする力」があります。

本書でも、インタビューなどにおける「対話力」がキャリアと人生を切り拓くコアスキルになるというメッセージを強調したいと考えました。

アタマがよくなる「対話力」
 著者:国山ハセン
 出版社:朝日新聞出版
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PIVOTのペルソナは自分、「なんとなく知っている」を紐解いていく

──PIVOTでは、資産運用にまつわるスキルセットを一流のプロから学ぶ「MONEY SKILL SET」や子育てスキルを学んでいく「EDUCATION SKILL SET」など、多様な動画を高い頻度で公開しています。各回のテーマはどのように決めているのですか。

ビジネスパーソンのニーズと自分の興味をもとに、各回のテーマやキャスティングを決めています。特に私は自分自身をペルソナにして考えることが多いですね。30代前半のビジネスパーソンはPIVOTのドンピシャのターゲット。例えば、マネーやキャリア形成、子育てなど、自分がまさに関心のあるトピックを取り上げています。

大事にしているのは、ビジネスパーソンの「なんとなく知っている」を紐解いて、課題解決につなげていくこと。たとえば「MONEY SKILL SET」なら、株式投資や保険、住宅など資産運用の課題を解決することが狙いになります。タイトルを「〇〇スキルセット」としているのも、そうした理由からです。

PIVOTの魅力の一つは、MCである自分が学び手になって専門家から知見を引き出し、視聴者にも同じ体験をしてもらえるところ。だからこそ、素朴な疑問をもとに素直に聞いていくようにしています。

動画の演出にしても、説明のCGを画面上に出すのではなく、ホワイトボードに書き込む動作を見せる。そうすることで、視聴者と「一緒に学んでいる感」が出せるよう工夫しているのです。

わからないことをきちんと表現するからこそ、専門家も「基本的なところから教えよう」という姿勢で、本音を語ってくれます。

本音の交換がしたいなら、人生の「ターニングポイント」を聞く

──ハセンさんはご著書のなかで、「対話のゴールは『本音の交換』」だと書いていました。「本音の交換」ができる対話づくりにおいて意識している点はどんな点でしょうか。

質問の項目や台本は頭に入れて臨みますが、それに縛られないように意識しています。相手の表情や声のトーンなど、リアルならではの温度感を大切にするためです。相手の本音を引き出すためには、こちら側の熱量や相手への好奇心をちゃんと表現することが必要だと考えているんです。

──「本音の交換」につながるよう、ハセンさんが大事にしている問いはありますか。

キャリアについての取材などでは、人生の「ターニングポイント」を高い頻度で尋ねるようにしています。人生で困難な出来事は何だったのか、それをどう乗り越えたのか。この問いによって、肩書きや職種を問わず、その人ならではのエピソードを引き出しやすくなると考えているからです。相手が何をどこで学んだのか、それによりどう飛躍していったのか。お聞きしたことを全て吸収したいという気持ちで聞いていますね。

人生の転換点は、感情が大きく変化するとき。色々な方のターニングポイントを聞くうちに、「こうした転換点では、こんな感情を経験することが多いのか」などと、共通項が見えてくる。色々なドラマにふれるたびに、次の対話で引き出せるバリエーションが広がっていきます。

──ハセンさんはこうした引き出しを増やすために、「こういう領域にアンテナを立てている」というのはありますか。

それでいうと、仕事中に限らず、アンテナはずっと立てているかもしれないです。日々の自分の感情や相手の言動に対しても、「なぜこの人といると居心地がいいのだろう?」などと、その背景を分析するのが日常になっています。「私はこう考えたけれど、別の角度から見たらどうか?」とか。できるだけ現状を客観視して、多角的なものの見方を意識しているんです。

──異なる視点を得ること、そしてメタ認知を習慣化されているのですね。

放送後の「オンエアチェック」で鍛えられた面もあるかもしれません。アナウンサーの新人時代から、毎日自分の出た放送をチェックして、改善点をメモしていました。ビジネスパーソンなら、商談などの様子を録画してセルフチェックするのもおすすめです。自分の気になるクセを直視するのは苦痛ですが、くり返すうちに慣れていきます。

「提案型」ファシリテーションで、場全体がポジティブな空気になる

──ファシリテーションをされる際に心がけている点についても教えていただけますか。

1つは、聞き手の一人ひとりから意見を聞くのではなく、参加者同士の横の会話が生まれるような仕掛けをして、双方向に語り合う形式を意識することです。参加者同士で話がふくらみ、場全体の一体感が醸成できるよう心がけています。

もう1つ大事にしているのは、相手の話に意見をいいたいときに「提案型」スタイルをとること。反論するのではなく、「さっきの話に関して、こういう考え方もできると思うんですけれど、どうですか?」と提案の形にするほうが、ポジティブに対話が進みます。

もちろん、賛成反対に分かれて批判的に意見を戦わせるスタイルにもメリットはありますが、こうしたスタイルは世の中にあふれています。大事なのは、参加者がこの場を楽しめたと思えるかどうか。多種多様な意見を積み上げていくほうが、参加者は「自分の意見も聞いてもらえた」と思えるし、最終的に場全体がポジティブな空気感になる。そのほうが、視聴者にもポジティブな印象を与えられると考えているのです。

──提案型のほうが参加者同士の関係性にもプラスになりますね。

そうですね。この提案型のファシリテーションは会議の司会などにも応用できると思います。

私が10年以上のキャリアを通じて大事にしているのは、「生きた言葉」を探すこと。これは、TBS時代の恩師である長峰由紀アナウンサーからいただいたメッセージで、インタビューを通して常に考えていることです。

聞き方や伝え方のテクニック以上に大事なのは、相手に向き合うときの「気持ち」の部分。相手に対する思いが土台としてあったうえで、テクニックも充実させられると、対話力がいっそう磨かれていく。

熱量をもって何かに向き合い続ける姿勢は、MCに限らず、活躍するビジネスパーソンの共通点だと感じています。私自身、熱量を感じられる人に興味をもちますし、取材では相手の熱量をできる限り引き出していきたい。今後も、目の前の人との対話を楽しみながら、「生きた言葉」を探し続けたいと思います。

読むたびに血がたぎる自己啓発書

──ハセンさんの人生観や生き方、発想などに影響を与えた本は何ですか。

1冊目は、高校3年生の頃に読んだ『無駄に生きるな熱く死ね』。台湾の極貧のバラック小屋生活を経て、20代で自社を年商30億円まで成長させた若き起業家のリアルな人生哲学が書かれた本です。ヴィレッジヴァンガード吉祥寺店に段積みになっているのを見たときから、タイトルがずっと忘れられなくて。

高校時代から新たなことに意欲的でしたが、「大学に入ったら色々と吸収して、社会に貢献しよう」と、ギアが一気に上がりましたね。先日、帯の文章を書いてほしいと依頼をいただいて再読しましたが、読むたびに血がたぎるような自己啓発書です。

2冊目は、橘玲さんの著作です。特に面白かったのはTBS時代に読んだ『働き方2.0vs4.0』。これからビジネスパーソンとしてどう生きていくかという問いを突きつけられました。会社員として働くだけでなく、海外に出ることも含めて色々な選択肢を示してくれた本です。橘さんは日本企業における年功序列などの慣習や同質性の高さを批判的に見ていますが、提示してくれる事例や分析から、色々と影響を受けましたね。

──最後に、ハセンさんが今後挑戦したいことを教えてください。

PIVOTでのインタビューを通じて、改めて海外の情報を日本に、そして日本の情報を海外に発信したいという思いが強くなりました。日本を飛び出して、自分の目で現地を見て、取材をしないといけないという気持ちは強いですね。先日も、プライベートでスタンフォード大学とニューヨークに一週間学びに行き、大きな刺激を受けてきたところです。

今後は、現地の生の声を、もっと躍動感をもって届けられたらと考えています。そうしたコンテンツにふれた人の新たな行動につながったらいいなという思いが強くありますね。


国山ハセン(くにやま はせん)

1991年生まれ、東京都出身。中央大学商学部卒業。2013年4月、TBSテレビに入社。『アッコにおまかせ!』『王様のブランチ』『ひるおび』などの情報バラエティ番組のアシスタントや進行役、朝の情報ワイドショー『グッとラック』のメインMC(司会)などを務めたのち、2021年8月からは報道番組『news23』のキャスターを務めた。数々の現場取材を経て2023年1月に独立し、ビジネス映像メディア「PIVOT」に参画。現在は、番組プロデューサー兼MCとして、英語や資産運用、教育など、ビジネスパーソンのスキル向上に役立つ「学び」に特化したコンテンツを、アプリやYouTube上で日々発信している。

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flier編集部

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