職種によって給与額はさまざまだ=イラストはイメージ(ゲッティ-)

 定期昇給、ベースアップに続く「第3の賃上げ」が注目されている。物価高で実質賃金が4月まで25カ月連続でマイナスとなる中、従業員の実質的な手取りを増やすその方策とは――?

 部品検査会社サニクロ(山梨県都留市)は、2021年6月に従業員向けの食事補助サービス「チケットレストラン」を導入した。チケットレストランは「エデンレッドジャパン」(東京都港区)が展開する、福利厚生策の非課税枠を活用したサービスだ。

 専用ICカードに企業が入金して、従業員は飲食店やコンビニなどの加盟店で食事や飲食物の購入ができる仕組み。カードへの入金金額は従業員と企業が折半して負担する。金額や負担割合など一定条件下で、企業負担分の所得税は非課税となる。従業員は食事に使える手取りが増え、企業も経費として計上できるため法人税負担が生じないなどの利点がある。

 従業員の8割をパートが占めるサニクロでは、業績に大きな影響を及ぼすパート従業員の定着率を高めようと賃上げに取り組んできた。だが、社会保険の加入義務が生じるなどして手取りが減る「年収の壁」を意識して働くパート従業員も多く、賃上げには限界が生じていた。このため「賃上げに代わる施策や他社との差別化としてサービスを導入した。従業員には喜ばれて、サービスが活用されている」(同社)という。

 エデンレッドジャパンによると、「チケットレストラン」の23年の新規契約企業数は、21年比約4倍になった。従業員の賃上げが急務となる中、定昇やベアの代替策として中小企業を中心に利用が拡大し、契約企業数は全国で約2000社と1987年のサービス提供開始から最多となった。

 人手不足が顕著な運輸や介護、建設業界からも問い合わせが増えているといい、24年も伸長を見込む。ニーズの高まりについて同社は「福利厚生を通じた取り組みは、実質的な賃上げの効果を感じやすく、エンゲージメント(働きがい)や採用力アップに貢献するなどメリットも多い」としている。【嶋田夕子】

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