記者会見で国立大の窮状を訴える国立大学協会の永田恭介会長=東京都千代田区で2024年6月7日午後5時1分、井川加菜美撮影

 国立大学協会(会長=永田恭介・筑波大学長)は7日、国立大の財務状況について「もう限界」と異例の表現で訴え、国民に理解を求める声明を発表した。永田氏は記者会見で「『限界』という言葉を使うのは初めてではないか。弱音を吐いているが、本当に厳しいという状況を伝えたい」と説明した。

 声明は通常、予算折衝を控えた7月に出すが、今年は来年度予算編成の方針や政権の重要課題を示す「骨太の方針」が策定される前に発表した。国立大の財政を支える国からの運営費交付金の削減に加え、物価高騰などで実質的に予算が目減りし続けていると指摘。寄付金など外部資金も含め収入を増やす努力をしているとした上で「しかし、もう限界です」と強調した。

 国立大の授業料は、文部科学省令で53万5800円を「標準額」とし、各大学の裁量で最大2割を上乗せできる仕組み。国立大は2004年の法人化以降、標準額は据え置かれる一方で運営費交付金は少子化や国の財政難を理由に削られ、24年度は総額1兆784億円と、04年度に比べて13%減少した。

 19年以降は授業料を標準額から引き上げる大学が増え、現在は東京工業大や東京芸術大、一橋大など首都圏の7校がそれぞれ改定。今年5月には東京大が学費の引き上げを検討していることが判明し、学生や教員の間で反対の動きが広がっている。

 永田氏は記者会見で、運営費交付金の増額を求める一方、学費の2割引き上げについて「各大学の裁量に任せるしかない」との考えを述べた。永田氏によると、地方の国立大は「所得水準が(都市部と)全然違うので、(学費を)上げられない」という声が大きいという。【井川加菜美】

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