米グーグルの本社=米西部マウンテンビューで、大久保渉撮影

 公正取引委員会が米グーグルに対し、独占禁止法に照らして問題視したのは、検索連動型広告の国内市場で唯一の競争相手といえる旧ヤフー(現LINEヤフー)の取引を一部制限した疑いがある点だ。しかも、グーグルはヤフーに広告配信の技術を提供する立場。その強みを背景にライバルを市場から締め出す行為が放置されれば、最終的には消費者に悪影響が及びかねないとの指摘も出ている。

 検索連動型広告は、利用者が検索したキーワードに関連して配信される広告。例えば、検索サイトで「パンプス」と入力すると、靴店の広告やファッション関連の販売サイトが自動的に表示される。特定の商品に関心を持つ消費者と広告主を効率よく結びつける手段として利用が拡大。電通などの調査では、2023年の日本のインターネット広告媒体費2兆6870億円のうち、検索連動型広告は1兆729億円と初めて1兆円を突破し、通常の文字や画像、動画広告を抑えて最多の約4割を占めた。

 こうした中、グーグルとLINEヤフーは、それぞれ自社以外のニュースサイトや検索ポータルサイトにも検索連動型広告サービスを提供してきた。両社が持つ大量の消費者データから、一人一人の好みに合わせた精度の高い広告を検索機能に連動させて配信。広告サイトを通じて商品が購入されれば、提携先のポータルサイトだけでなく両社にも収益が分配される契約になっていることが多い。

 ただ、ヤフーは10年に検索エンジンを米ヤフーからグーグルに切り替えた際、検索連動型広告の配信システムの提供も受け始めた。当時、業界では両社の提携で国内検索市場の9割をグーグルのエンジンが握ることになり、検索連動型広告でも競争が働かなくなることへの懸念が高まった。両社は公取委に対し、提携後も検索サービスや検索連動型広告の運営はそれぞれ独自に担うと約束していたが、今回それがほごにされていた疑いが強まった形だ。

 東北大大学院法学研究科の伊永大輔教授(独禁法)は「ヤフーが(グーグルから制限されたとみられる)スマートフォン向けの配信をやめると、スマホの連動型広告のシェアはグーグルが100%を握り、スマホ市場での競争は消滅する。公取委は10年の時点で、グーグルが約束を破った際に制裁できるよう法的な縛りをかけるべきだった」と指摘する。

 公取委による21年の報告書では、19年度の検索連動型広告の国内シェア(売上高ベース)はグーグルが7~8割、ヤフーが2~3割で、その差は大きい。早稲田大法学部の土田和博教授(独禁法)は「広告市場をグーグルが独占すると、広告主が支払う広告料は上がり、最終的には消費者に転嫁される可能性がある」と指摘している。【古屋敷尚子、藤渕志保】

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