全国銀行協会の福留朗裕会長=東京都千代田区で2024年3月13日午後4時19分、杉山雄飛撮影

 「日銀の利上げによって、預金獲得競争が銀行業界で起こる」

 3月の日銀のマイナス金利解除が、銀行ビジネスの潮目の変化につながるとみるのは、4月に全国銀行協会長に就任した福留朗裕(あきひろ)氏(三井住友銀頭取)だ。

 集めた預金などの資金を企業などに貸し出す際に、金利を上乗せすることで稼ぐのが銀行の伝統的なビジネスモデルだ。長年の超低金利政策で脇に追いやられてきたが、「金利のある世界」が戻ってくれば、預金の重要性は再び高まる。

 現在、日銀が0~0・1%程度としている短期金利について「日本の成長率をポジティブに見ており、1%には届かないかもしれないがもう少し上でもいい」とし、利上げ余地はあるとする。

 一方で、資金を借りる際の金利が上がれば、経営に行き詰まる企業が増える懸念もある。福留氏は「中小企業では人手不足が深刻化し、物価も上がる中、経営が苦しい会社もある。資金面だけでなく、経営全体の支援も含め、銀行業界全体でやっていく」と語り、企業の生産性向上などでも貢献する考えだ。

 インフラ強化も業界の課題だ。2023年10月に発生した銀行間の送金に使う「全銀システム」のトラブルでは、延べ500万件以上の取引に影響した。福留氏は「ベンダー(システム外部業者)任せで、マネジメント能力が欠如していた。自分たちでリスク管理をしていく形に変える」とし、専門家を交えながら再発防止を図る。

 27年の稼働を予定する次期全銀システムについては「1回作れば10年近く使う。その間に技術が進展するので、拡張の余地を残した設計にするのは大事」との考えを示した。【杉山雄飛】

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