インタビューに応じるりそなホールディングスの南昌宏社長=東京都江東区のりそなホールディングス東京本社で2024年5月、井口彩撮影

 「時代の変化も総合的に見ながら、顧客の立場に立って交渉し続ける以外にない」。りそなホールディングス(HD)の南昌宏社長が意気込むのは、取引先との関係維持を目的に保有する政策保有株式の売却加速だ。現在2600億円(簿価ベース)ある政策保有株を、2029年度までに3分の1に減らす。

 取引先との売却交渉が簡単ではないことは、巨額の公的資金が投入され実質国有化された03年の「りそなショック」時に経験済みだ。保有株式の減損処理で財務体質を悪化させた経緯から、政策株の売却を迫られた。当時は銀行が取引先の株を持つのが「当たり前の時代」。渋る相手を膝詰めで説得し、当時1兆4000億円(同)あった政策株は05年3月までに1兆円分売却した。

 足元の政策保有株は時価1兆円で、今後の売却で3000億円相当の資金が得られる想定という。中堅・中小企業への資金提供や自社の構造改革に充てるほか、「我々にはない経営資源に有効利用し、金融グループとして一段上のステージを目指したい」(南氏)と話す。

 日銀の金融政策の転換もビジネス機会と捉える。南氏は「緩やかなインフレが前提になり、安定的な長期運用が必要になる」と強調し、信託関連の運用資産残高は30年度までに現在の1・5倍の15・8兆円に増やす。投資信託などで顧客の資金を運用するサービスでは、6月から契約者が死亡した場合に相続しやすくするなど利便性向上も追求する。【井口彩】

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