私は普段、企業や自治体向けに人事制度の構築やチームビルディング、コーチングなどの研修をしているが、研修の冒頭で必ず聞く質問がある。それは「24時間以内にあった、良かったことは何ですか」という問いだ。

 受講者の反応も個性豊かだ。天を仰ぎながら考える方もいれば、すぐに思いつき笑顔で話し始める方、周りの話を聞いて思いつく方もいる。

 この質問の目的は「視点を切り替えて今に集中してもらう」ことにある。アメリカ国立科学財団の研究によると、私たちの脳は1日に1万~6万回、思考を行いそのうち約8割がネガティブな内容だとされている。

 ネガティブな思考は危険や注意をキャッチするために必要な要素だが、ループにはまると抜け出すのに苦労する。12年前の私がまさにそうで、メンタル不調を患った。

 そこから体調も少し良くなった頃、ポジティブ心理学の本で「スリーグッドシングス(1日にあった3つの良いこと)」を考えると視点を切り替えやすくなると知り、わらにもすがる思いで、良かったことを毎日3つ考えるようになった。

 この小さな習慣を10年続けて一番良かったことは幸せを感じやすくなったことだ。何げないことも幸せに感じられ、周りへの感謝の気持ちが増えて、人間関係も育みやすくなった。

 また何でも欲しがるのではなく、本当に実現したいことや集中したいことを取捨選択できるようになったのも良かったことである。

 ただ、始めた当初は、良かったことを考えても全く出てこなかった。そのことを心理士に相談すると「答えを出すことではなく、この質問を脳に言い続けることが大事だ」と助言を頂き、続けるうちに1つ、2つ、3つと良かったことが思いつくようになった。

 研修受講者の中にも、もちろん思いつかない方もいるが「今の質問で視点が切り替わった人」と聞くとほぼ全員が手を上げる。ネガティブなループにはまりそうなときは選択肢の1つとして活用いただきたい。

(ワダチラボ社長)

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