収穫時期を迎え刈り取られる山田錦=兵庫県加西市で2022年10月13日、植田憲尚撮影

 新年度のスタートといえば、学校の入学式や企業の入社式がある4月がなじみ深いが、5月以降に迎える業界も存在する。どうしてそうなったのか。

 年度とは暦年(1~12月)とは別に、事業の都合で区分された1年間を指す。原料の収穫時期が事業に影響する農作物で、独自の年度が設けられていることが多い。

 例えば、6月1日は「生糸年度」の新年度の始まり。ほかに「酒造年度」(7月1日~)、「綿花年度」(8月1日~)、「いも年度」(9月1日~)、「砂糖年度」「でん粉年度」(10月1日~)などがある。

 一般財団法人「大日本蚕糸会」(東京都)によると、生糸年度の場合は、蚕が繭になり糸が採取できる時期に合わせて6月1日が「年度初め」になったという。ただ、日本の養蚕業の衰退に伴い、生糸年度は現在は用いられていない。大日本蚕糸会では暦年で各種データを作成している。

生糸の原料となる蚕の繭=富山県南砺市城端町の松井機業で2021年4月26日午後2時19分、高良駿輔撮影

 時代に応じ、年度初めを変化させたものもある。日本酒などの「酒造年度」は元々、秋の収穫時期などを理由に10月1日が新年度の始まりだった。1965年の国税庁の通達から、現在の7月1日に変わった。

 その背景には戦後復興に伴い、国による米の流通や価格統制が緩和されつつあったことがある。原料米の確保が以前より容易になり、酒造会社は営業を強化。7月ごろから収穫できる早場米の活用を進めたほか、醸造技術や設備の進歩で季節を問わない酒造りにも乗り出しており、7月1日が次第に定着した。

 長らく酒造年度の始まりとして認知されていた10月1日は、日本酒造組合中央会が78年に「日本酒の日」として制定した。現在各地でイベントが開催されている。【植田憲尚】

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