京浜急行バスの実証実験で、運転手がいるものの、駐車車両などがなければハンドルを持つことなく自動運転で走行していく=横浜市金沢区で2024年5月28日、遠藤和行撮影

 路線バスが担う広域の営業範囲よりも狭い限られた地域で、地元住民の多様な移動の要望に応えることを目指した自動運転バスの実証実験が28日、横浜市などの2カ所で始まった。京浜急行バス(横浜市)、東急バス(東京都)、東急(同)の3社が共同して6月3日まで行う。京浜急行バスが自動運転バスの実証実験を行うのは初めてで、同社は実験を通して住民の要望把握を目指す。

 実証実験は、事前に作成した運行ルートの三次元地図を基に、車両搭載のレーダーで周囲の状況を照合しながら進む。運転手が乗車しており、危険を察知すれば手動運転に切り替えられる「レベル2」相当の走行だ。

 車両は乗客6人乗りの電気自動車で最高時速19キロ。車両内外に取り付けた計11台のカメラの映像が、京急グループ本社に設置した「遠隔コントロールセンター」に映され、担当者1人が2台分を監視する。

 実施場所は京浜急行バスが「能見台エリア」(横浜市金沢区)、東急バスが「虹ケ丘・すすき野エリア」(同市、川崎市)。いずれも高齢化が進み、坂が多い地域という特徴がある。

 能見台のルートは1周約3・2キロで、乗降できる場所が9カ所ある。この日は午前10時に運行を開始し、第1便には地元住民ら6人が乗車した。乗り終えた60代の女性は「思ったより安全で、乗り心地がよかった。ただ、ルートにはスクールゾーンもあり、子どもが屋外に出ている時間帯は心配だ」と話した。

 実験について野村正人京浜急行バス社長は「乗客が何を望んでいるかを吸収し、次につなげたい」と話した。古川卓東急バス社長は「最新の技術をその都度、バスに取り入れれば、運転手の負担を軽減できる。離職を防ぎ、運転手を目指す際の壁が少しでも低くなるのではないか」と期待を述べた。【遠藤和行】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。