東京都心の3区(港区、千代田区、中央区)で2019年以降、大規模な都市開発によって少なくとも6万平方メートルの緑が創出されたことが、都のまとめで判明した。単に樹木を増やすだけでなく、防災や生物多様性の保全なども狙った開発手法が注目を集めている。
20年9月に開業した東京ポートシティ竹芝(港区)のオフィスタワーは、低層部分に階段状に配置した「スキップテラス」で、空、蜂、水田、香、菜園、水、島、雨をイメージした「竹芝新八景」を展開している。水田や菜園、ハーブガーデンを備えるほか、養蜂にも取り組む。
自然環境が持つ多様な機能を活用する「グリーンインフラ」も取り入れ、土や植物の根で雨水を一時的に貯留し、地下へ浸透させる「レインガーデン」を整備。地下の貯水槽も含めてビル全体で1400立方メートルの雨水を貯水できる。
開発を手がけた東急不動産によると、5月11日には田植えが行われ、オフィスビルで働く社員や近隣住民らが参加した。冬場の餅つきも毎年の恒例行事になっているという。
緑化面積が最も広かったのは、23年11月開業した麻布台ヒルズ(港区)だ。6000平方メートルの芝生エリアを中心に敷地全体に320種類の植物が植えられている。広場近くの斜面には柑橘(かんきつ)類などの果樹園があり、五感で楽しめる緑が特徴だ。
「緑に包まれ、人と人をつなぐ『広場』のような街」をコンセプトとし、「健康」にも配慮。慶応義塾大学予防医療センターが移設されて最新の医療機器を用いた人間ドックを提供するなど、住民や訪れる人たちの健康増進に注力している。
再開発で緑地が増えている背景には「都市再生特別地区」をはじめとする特例制度がある。環境配慮の度合いに応じて、土地の用途や建物の容積率に関する規制が緩和されるなど、より自由度の高い再開発計画が認められる制度だ。
都心エリアで進められる再開発は、緑の量だけでなく質の確保も重要になっている。三井不動産などが手がける中央区築地の再開発事業では、隣接する浜離宮恩賜庭園の緑とのつながりを意識した大規模緑化が構想されており、人と自然が共生する「築地の森」を整備する計画だ。【佐久間一輝】
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