関西経済同友会の代表幹事に大林組副社長の永井靖二氏(65)が就任した。先任の代表幹事で、パナソニックホールディングス副社長の宮部義幸氏(66)とコンビを組む。開幕まで1年を切った大阪・関西万博に向け、山積する課題にどのように取り組み、成功に導くのか。抱負を聞いた。【聞き手・妹尾直道】
――大林組出身の代表幹事は2011~13年の大林剛郎会長以来で2人目となります。代表幹事として何に取り組みたいですか。
◆さまざまな業界の経営トップが企業規模にかかわらず、幅広く交流できることを大切にします。交流の場を広げるため、次代の同友会を担う役員クラスの交流会を設けます。素晴らしいビジョンや経営哲学を持っている方も多いので、各社に知見を持ち帰って経済発展につながるようにしていきたいです。さまざまな社会課題に向けた提言もサポートしていきます。
――代表幹事の通例の任期は2年なので、万博の会期と重なります。どのような点に期待していますか。
◆万博は関西が持つ歴史や文化、医療、ものづくりの技術など高いポテンシャル(潜在力)を国内外に発信する最大のチャンスです。万博を機に国際化や多様性を進めて、次世代につなげていくのがミッションの一つだと思っています。個人的には、大林組も施工している世界最大級の木造建築物「大屋根(リング)」にぜひ上がってもらい、壮大なスケールを体感してほしいです。
――海外パビリオンのうち参加国が自前で建てる「タイプA」の建設遅れが課題になっています。タイプAを選ぶ国の数も当初の60から40前後に減少するのでは、との見方があります。
◆既に建設会社が決まっている国は、開幕に間に合うよう全力を尽くされると思っています。決まっていない国は経済産業省や外務省、日本国際博覧会協会(万博協会)の働きかけを見守りたいと思います。
何度も足を運んでいただくには数は多い方がよく、質も重要だと思いますが、多いか少ないかは人によって受け取り方が変わってくると思います。民間パビリオンもコンセプトが凝っています。全体のバランスの中で注目すべきパビリオンは多いので、来場する皆さんが飽きないような企画は盛りだくさんだと思っています。
――東京など関西以外における機運醸成はどうしたらよいでしょうか。
◆同友会だけではなく、関西経済連合会や大阪商工会議所、各企業含めて個々の尽力によって次第に高まってくると思います。各地の同友会にこちらから情報発信をするなど、やれることはできる限りやっていきたいと思います。
――「2024年問題」とも呼ばれる建設業の時間外労働の上限規制が始まりました。万博会場の工事に影響は及んでいますか。
◆業界として対応しなければならない問題です。大林組としての話になりますが、大屋根の工区は週休2日で工事をしています。早めの発注によって、調達も含めて問題は解決できると思います。現場でもデジタル化を進め、入退場の顔認証や工事車両の管理システムを導入し、生産性向上に寄与しています。
――万博のレガシー(遺産)をどのように関西経済に還元していきたいですか。万博会場の跡地利用について考えはありますか。
◆同友会に万博レガシー委員会を立ち上げます。かんかんがくがくの議論を重ねて、提言に結び付けたいと思います。
閉幕後の大屋根について、建築会社の一員として個人的には残したい気持ちはあります。1970年大阪万博でも太陽の塔やお祭り広場の大屋根の一部がレガシーとして残っています。万博協会が活用策を公募して検討するので、その結果を見守りたいと思います。
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ながい・せいじ 山口県出身。大阪大工学部卒業後、1982年に大林組入社。99年に開館したJR奈良駅前の「なら100年会館」の新築工事などに携わる。広島支店長、専務などを経て2024年4月から副社長。関西経済同友会では23年5月に常任幹事に就き、24年5月16日に代表幹事に就任した。
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