高層ビルが建ち並ぶ東京都心。中央奥は皇居=東京都港区で

 帝国データバンクの調査で、6割以上の企業が円安は自社の利益に悪影響を与えると回答した。約半数が自社にとって適正な円相場の水準を「1ドル=110円以上~130円未満」と回答し、155円前後で推移する現状とはかけ離れていた。過度な円安が重い負担となっている実態が浮かんだ。

 調査は5月10~15日に実施し、中小企業を中心に1046社が回答した。最近の円安が自社の経常利益に与える影響を尋ねたところ、「プラス」の回答が7・7%だったのに対し、「マイナス」は63・9%にのぼった。「影響なし」は28・5%だった。売上高への影響でも「プラス」が16%で、「マイナス」が35%と差がついた。「影響なし」は49・0%だった。

 自社にとって適正な為替レートを尋ねたところ、「120円以上~130円未満」が28・9%で最も多く、次いで「110円以上~120円未満」が21・2%としている。

 回答した企業からは、現状の円安について「輸出には良いが、輸入は厳しい」(金属製品卸売り)、「海外で縫製をしているので大打撃。今でも少ない利益が飛んでしまう」(繊維製造)など行き過ぎた水準の改善を求める声が相次いだ。 「輸入材料が多く、取引メーカーが価格を上げてきたら、受け入れるしかない」(医療・福祉系企業)、「円安で輸入時計や宝石が軒並み値上げ。価格が高騰しすぎて消費意欲が低迷し、売り上げが減少した」(小売業)など取引先との関係や、消費者心理の悪化を懸念する意見もあった。

 帝国データバンクは「一部の大手企業にとって円安は追い風かもしれないが、多くの中小企業にはマイナス影響が響いている。円安による原材料の高騰分などを価格転嫁していく機運を高める必要がある」と指摘している。【杉山雄飛】

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