記者会見するJR東海の丹羽俊介社長=名古屋市中村区で2024年5月16日午後3時5分、真貝恒平撮影

 「地域の皆さんに大変な心配と迷惑をかけている」。リニア中央新幹線のトンネル掘削工事が行われている岐阜県瑞浪市で井戸などの水位が低下した問題について、JR東海の丹羽俊介社長は16日の定例記者会見でこう述べた。同社は工事を一時中断してボーリング調査を実施する方針だが、地域住民には不安が広がり、今後は地域や周辺自治体の理解がさらに求められる。

 同社によると、同市大湫(おおくて)地区では地下を通る日吉トンネル(全長7・4キロ)の工事が行われ、水位が低下した水源近くまで掘削が進んでいた。同社が水位の低下を把握したのは2月下旬で、個人用の井戸9カ所、水源・ため池5カ所の計14カ所で低下を確認した。一部では水枯れで使用できない状況だった。

リニア工事中断、対応策を説明

 掘削現場では昨年12月と今年2月中旬に湧水(ゆうすい)が発生。昨年12月の湧水は止まったが、2月中旬の湧水はトンネルの切り羽(工事の先端部分)から約50~100メートル手前の区間で今も毎秒20リットル程度の水量が出続けており、丹羽社長は薬液注入で止水する方針を明らかにした。

 また応急措置として、井戸水を上水道に切り替える工事を順次進め、今後の工事が水田の地下を通ることから、深さ約15メートルの新たな観測用の井戸を設置し、代替水源を確保する。工事終了後、家庭の井戸が復旧すれば、再び井戸水を使えるように配管工事を行う。一方、復旧しなかった場合は配管を埋設するなど本格的な上水道への切り替えを実施し、水道料金や維持管理費の増額分は同社で負担するという。

 同社は、一部トンネルを掘り進めた上で工事を中断するとしている。地元の大湫町区長会長の纐纈(こうけつ)富久さん(67)は、毎日新聞の取材に「なぜすぐに中断しないのか疑問はある。とにかく原因究明に努めてほしい」と語気を強めた。丹羽社長は会見で今後について「専門家の意見を聞きながら、地域住民や自治体に状況を逐一報告し、真摯(しんし)に対応していく」と話した。【真貝恒平】

リニア工事の残土処分場巡る協議は中断

 岐阜県御嵩町は16日、同県瑞浪市での水位低下問題を受け、リニア中央新幹線工事で生じる残土の処分場整備計画を巡るJR東海との協議を中断すると発表した。中断期間は「原因究明と対策などが明らかになるまで」としている。【太田圭介】

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