シャープ本社に表示されたロゴ=堺市堺区で2024年4月28日、本社ヘリから加古信志撮影

 シャープは14日、テレビ向け大型液晶パネルを製造する完全子会社、堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市)の生産を9月までに停止すると発表した。これにより、国内から大型液晶パネルの生産拠点がなくなる。同日発表した2024年3月期連結決算は液晶パネル事業の不振が響き、最終(当期)損益が1499億円の赤字となった。最終赤字は2年連続。

 呉柏勲社長兼最高経営責任者(CEO)は14日の記者会見で「当初想定の再生計画の遂行が困難になったため、生産を停止することを決定した」と説明した。大型液晶パネルはここ数年で価格が半分になるなど市況が急速に悪くなり、業績悪化の元凶になっていた。ライバルに比べ投資も不足しており、事業の立て直しは困難と判断。生産停止に踏み切る。

 シャープは09年、液晶テレビの需要拡大を見込み、約4300億円を投じてSDPを設立した。「液晶のシャープ」としてブランドを確立したが、韓国勢や台湾勢などとの価格競争が激化して深刻な経営悪化に陥った。その結果、シャープは16年に台湾大手、鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入り、SDPへの出資比率を引き下げた。

 しかし、鴻海は米州市場向けの需要の増加を見込んで方針を転換。22年にシャープがSDP株式を買い戻して完全子会社化した。ところが、その思惑は外れ、テレビやスマートフォン向けパネルは液晶から有機ELへのシフトが進展。SDPの業績悪化を受け、シャープは23年3月期連結決算で2608億円の最終赤字を計上し、17年3月期以来6年ぶりの赤字に転落した。

 24年3月期も当初は100億円の最終黒字を予想していたが、液晶パネル事業の業績悪化に歯止めがかからず、減損処理を行った結果、1499億円の大幅な最終赤字になった。

 シャープはSDPの生産拠点について、データセンターへの転用を進めていく方針。従業員は早期退職を募集したり、配置転換を行ったりするという。

 同日発表した25~27年度の中期経営計画は、親会社である鴻海との連携を深め、同社の持つプラットフォームを活用しながらAI(人工知能)やモビリティーなどの新たな成長モデルを確立することなどを盛り込んだ。【橋本陵汰】

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