マクラーレン750Sスパイダー。4リッターV8エンジンが750馬力を叩き出すスーパーカー。F1の技術を市販車にフィードバックした、世界屈指のモンスターマシンの試乗記後編をお届けする。
スタートボタンを押すと轟音とともにエンジンに火が灯る。かなりのボリュームだがしばらくすると、回転数が落ち、音量も控えめに。
操作はシンプルで初めて乗っても戸惑うことはないだろう。あえていうならパーキングブレーキのスイッチがステアリングの右側にあることや、センターディスプレーの操作がやや分かりにくいぐらいだろうか。
ドライブモードの切り替えはメーターパネルの左右にあるスイッチで行う。ステアリングに近く、走行中でも切り替え可能で、右がパワートレイン、左がハンドリングを制御する。モードは、コンフォート・スポーツ・トラックの3種類。
コンフォートは早めのシフトアップで回転数を抑えた快適な乗り心地で、街中での走行に使いたい。スポーツは、高回転の制御になりエグゾーストノートが心地よく、足回りも引き締まる。トラックは電子制御による介入が少なくなり、よりピュアなハンドリングになるため、サーキット走行などで使用したい。
トラクションコントロールなどの詳細な設定は画面から行う。750馬力を後輪のみで受け止めるので、ワインディングロードなどでも、ある程度のマージンは確保したい。リアタイヤが暴れだすと、筆者レベルではコントロールができなくなるだろう。
アクセルを踏みスタート。さすがスポーツカー、ステアリング、アクセル、ブレーキのすべての操作感に重い手応え(足応え)がある。特にブレーキは、車庫出しでの微妙な動きに気をつかう。
もっとも、街中に出て、高速道路や山道に入ると、逆に気持ちよさを感じるようになる。高速道路の進入でアクセルを踏み込むと、長いはずの誘導路が一瞬で終わり本線が迫る。減速が必要なら、カーボンセラミックのブレーキが強烈な制動力を発揮、車速を一気に落とす。
路面状況を的確に伝えるハンドリングは、高速コーナーから急カーブまで常に接地感があり、タイヤの状況を伝えてくれる。
スポーツカーであり、乗り心地は硬く、エンジン音も常に耳に響いてくるが、運転はとても楽だ。一昔前のステアリングを常に握りしめ、右足に意識を集中するようなドライビングは必要ない。
ステアリングを軽く握り、好きな歌を口ずさみながらのクルージングが楽しめる。比較するのは失礼だが軽自動車を運転しているような感覚といったらいいだろうか。これも絶対性能が高いゆえのことだが。
もちろん、スピードと旋回能力の高さは超一流だ。今回の試乗は午前中があいにくの雨で、午後からは曇り空だった。ウエットの路面も、フロントが19インチの245/35、リアが20インチの305/30のピレリP-ZEROが安定したグリップを発揮する。
ラフなアクセル操作でもホイールスピンもなく確実に加速していく。大雨ならともかく、少々の雨なら走りに不安は感じない。
本来なら箱根に向かいたいところだが天候を考えて湾岸線を流す。午後からは雨もやみ路面が乾き始める。ドライブモードをスポーツにすると、エンジンの回転数が上がり、マフラーから迫力あるサウンドが響く。流れに乗った走行でもワクワク感が高まるのはなぜだろう。アクセルやブレーキ、ステアリングの力加減に対するリアルな反応が、メカをコントロールしているという心地よさ、そしてスリリングな感覚を生み出す。
トラクションコントロールなどの電子制御は優秀で、よほどの無茶をしなければ破綻することはないだろうが、ぎりぎりまで介入を控えている感じも受ける。タイトコーナーのアクセルオンで、お尻がムズムズするのは、私のようなレベルのドライバーへのサービスなのかもしれない。
公道では持てる性能を発揮することはないが、クルマという乗り物のポテンシャルを実感させてくれるスーパーマシンが750Sだ。
■750Sスパイダー マクラーレン
【 定員 】 2人
【 全長 】 4569㍉
【 全幅 】 1930㍉
【 全高 】 1196㍉
【 車両重量 】 1326㌔
【 エンジン 】 3994㏄V8ツインターボ
【 最高出力 】 750馬力
【 駆動方式 】 ミッドシップ、後輪駆動
【 ミッション 】 7速SSG
【 燃費(WLTPモード) 】 8.2㌔
【 車両本体価格 】 4300万円(税込み)
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