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 とある調査で、ニュースを「あえて見ない」人が増えているとの結果が出た。日本では8%の人がニュースを回避する傾向にあり、若年層ほどそれが強いという。SNSでは「デマにだまされたくない」「楽しくない」「偏向ばかり」との声もある。

【映像】10〜20代は16% 世代別ニュース回避率

 イギリスのオックスフォード大学の調査(2022年)によると、ブラジルでは54%、イギリスでは46%、アメリカでは42%が、ニュースを回避する傾向があるという。なぜ避ける人が増えるのか。『ABEMA Prime』では、8年間ニュースを見ていない人物と、新聞記者経験のある研究者と考えた。

■なぜニュースを見ない人が増えた?

 ウクレレ奏者のガズさんは、8年近くテレビや新聞などのニュースを見ていないという。その理由として、「好きなことがある人は、ニュースのようにパッケージングされた情報ではなく、欲しい情報を自分で取りに行く」と説明する。

 白血病で骨髄移植した経験から「かけがえのない時間を、やりたいことに費やしたい」といい、「自分に関係ないニュースよりも、なんでもない日常が大事だと感じた。ただ、『みんな見るな』ではなく、見たい人は見ればいい」と語る。

 とは言っても、まったくニュースに触れないわけではなく、自主的に情報は取りに行く。「シャワーのように情報を浴びると、知らないうちに自分がなくなってしまう。いまはインターネットもあるし、自分が必要なものを取りに行けばいい」。

 ギャルタレントのあおちゃんぺは、「ネットでつぶやかれる回数が多いものは、いちおう関心を持っている」というが、『ABEMA Prime』に出演する以前は、まったくニュースを見ていなかったと振り返る。「5年ほど前は、いまと真逆の生活をしていたが、幸福度で言えば楽しく生きていた。いろいろなことを知ると、世間の闇もわかってきて、未来や日本に対して心配な気持ちが高まってしまう」。

 リザプロ社長の孫辰洋氏は、「ガズさんと反対で、ニュースは全員見た方がいい」と主張する。「教育系の経営者として、『学習塾の倒産が今年最多』といった情報は重要だ。中国系のアイデンティティーを持つ立場から、反日・反中感情のニュースも見ないと生きていけない。『見ない代わりに好きなことをする』という発想はない」。

 そして、「ガズさんぐらいライフスタイルが形成されていればいいが、形成前の学生がニュースを避けると、社会を理解しないまま、社会に出て行ってしまう可能性がある。それはどうなのか」と心配する。

■情報過多時代、オールドメディアの在り方にも変化

 元毎日新聞記者で、立命館大学教授の白戸圭一氏は、「ニュースを見ると、つらい気分になる」という感情に寄り添う。「私はアフリカ地域研究が専門で、記者時代には戦争取材で、悲しい現場に多く立ち会った」。

 しかしながら、学生については、少し違う考えのようだ。「私が勤める国際関係学部では、ニュースを見ていないと授業が成立しない。親から年間100万円以上も払ってもらって、この学部に来ている以上は、世界の状況を知る必要がある」。

 マスメディアには「偏向している」との批判が絶えないが、「すべてのニュースは、報道された時点で、絶対に偏向している」と明言する。「例えば90分の大学講義を取材して、90分丸々流せば報道にはならない。3分の映像や50行の記事にまとめるのがニュースで、そこには選ばれた事実と、そぎ落とされた事実がある」。

 あらゆる報道には“偏向”があるとしつつ、その上で「マスメディアしかなかった20〜30年前は、世界中の人々は一方的に見させられていた。若年層の知的負荷としても、テレビで親が見ているニュースを横目に、社会の関心を生むことを強いられていた」と振り返る。

 しかしスマートフォンなどの普及で、「人生の初期段階から、自分個人と機械との間だけで関係が成立することで、興味関心のあることだけに知識が偏るかもしれない。本人は偏りに気づいていないが、周囲からは『この事だけ詳しい』と評価される人が増えかねない時代だ」と感じているという。

 その上で、ニュースは20〜30年前には「見るしかない」状況だったが、現在は「見なきゃいけないとは言えない」と、時代の変化に触れつつ考察する。「テレビ局や新聞社では、記者やディレクターが取材したものについて、“ゲートキーパー”を担う人間が『何を報じるべきか』を判断している。複数人が組織的にチェックすることで、事実関係の間違いは少ない」。

 ファクトチェックのみならず、ニュースバリューにおいても、時代で状況が異なる。「オールドメディアは『読者が知るべき情報だ』と判断していたが、その基準も社会状況で変化するべきだ。男性が圧倒的な職場では、女性の生理が深刻な問題として認識されて来なかった。報じる側の女性比率が高まり、ニュースの価値観も変化してきている」。 (『ABEMA Prime』より)

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