いま、注目されている「103万円の壁」。

衆院選を経て少数与党となった自民党・公明党に国民民主党が引き上げを迫り、3党の税調会長らによる協議が重ねられてきました。

しかし、国民民主党が178万円までの引き上げを求めるのに対し、与党案が示したのは123万円までの引き上げ案。

結局、与党と国民民主党は平行線のまま、6回目の協議で国民民主党の古川税調会長が席を立ち、協議は打ち切りに。与党は20日取りまとめる来年度の税制改正大綱に、「123万円」までの引き上げを書き込むことを決めました。

なぜ、国民民主党は席を立ったのか?今後の議論のあり方は?
「103万円の壁」の引き上げを目玉政策に掲げてきた国民民主党の玉木氏に聞きました。(※インタビューは19日の午前に行いました)

「与党案ではインフレに対抗できない。3党の幹事長合意に反してる」

Q)現状として協議は決裂し、123万円の明記が確実になりました。どう受け止めていますか?

まず、先般の3党の幹事長で、178万円を目指して、来年から引き上げるというふうに明確に合意をしたので、そこからすると123万円で決着させるっていうのは、我々としては到底納得できないし、その合意に反するものだと考えておりますので正直驚きましたね。

かつ中身なんですけど単に178万円を目指して20万円引き上げることになってるんですが、中を見ると基礎控除と給与所得控除の二つにわかれていると。

サラリーマンの方にはですね給与所得控除も適用されますから20万円の引き上げということになるんですが、サラリーマンじゃない方にとっては基礎控除10万円分の引き上げのみということになります。

加えて、サラリーマンの方にもですね、実は給与所得控除ってこの所得の増加に応じてだんだんなだらかになっていくので、今回、最低保障基準を55万から65万円上げてもですね、その減税効果が満額及ぶのは年収160万円強の人までで、190万円ぐらいまでの人は効果あるんですけどだんだん薄れていく。逆に言うと、190万以上の収入のある方についてはですね、給与所得控除10万円あげますよと言っても、これは減税効果ゼロなんです。

だから、多くの人にとっては実は基礎控除10万円のみの引き上げということになっているので、私達そもそも今インフレと賃上げと円安でこの取り過ぎた税収を少しでもお返しして、インフレでいろんな物の値段が上がってますから手取りを増やしてそのインフレに打ち勝ってもらいたいということで、取りすぎた税金をお返しするということを言っています。

しかし、例えば年収300万の人でいうと、サラリーマンで年1万円(の手取り増)。サラリーマンじゃない方だと、年間5000円返ってくるといっても、それはとてもインフレに対抗できる手取りの増加ではないのでその中身自体も極めて不十分だし、何より先ほど申し上げた3党の幹事長合意に反していると思いますね。
(※家計への影響は玉木氏による試算です)

インフレはすべての働く人に影響する。基礎控除の引き上げを

Q)今回示された政府案では部分的にしか恩恵が及ばないとのことですが、玉木さんとしては給与所得控除ではなく、基礎控除を引き上げるべきとのお考えか

そもそもこれまでの税制改正でも、いろんな働き方が出てきているので給与所得控除を減らして基礎控除を上げるという税制改正をしていますよね。

インフレはサラリーマン・サラリーウーマンに限らず、全ての働く人に影響を与えているので、上げるのは基本的には基礎控除を今の48万円から75万円引き上げて、123万円ならいいと思うんですよ。基礎控除を123万円にしてくれればですね、うまく収まると思うし。生きるために最低限必要なコストを賄う所得からは税金をいただかないというのが憲法25条の生存権に基づく基礎控除の基本的な考え方ですから。48万円という絶対額で1年間生きていけるのかと。48万円までは税金を取りませんよと言ったって、48万円では生きていけませんよね。

そもそも長年続いてきた48万円という基礎控除の水準自体どうなんだっていうこともね、今回は考えるべき。その意味で我々は123万円に、基礎控除を引き上げようということを提案しています。

「税調レベルでは意味がない、幹事長レベルでやる必要」

Q)なぜ国民民主党は席を立って交渉を続けなかったのか、改めて教えてください

繰り返しになりますが、3党の幹事長間で178万円を目指して来年から引き上げるということを合意した、その枠の中で各党の税調会長が協議しているわけであって、そこからさらに答えが出てこない。しかもそれが幹事長間の合意に沿ったものでないということであれば、もう税調レベルで続けても意味がないし、それ以上の進展が見込めない。

なのでもう一度、より大きな枠組みで合意した3党の幹事長間でしっかり話し合って協議の認識合わせをしないと、このままいっても埒が明かないということで、現場レベルでのこれ以上の協議については行わないという判断になったんだと承知しています。

Q)そうなると、ご自身が協議に乗り出す可能性はあるということですか。

幹事長レベルでまずやる必要があると思います。幹事長のレベルで178万円を目指して来年から引き上げるという、この3党の合意なので、その中で実務者がやっていた。ただその実務者ではもうその目指すレベルにいかないということであればもう一度、政治判断も含めて行えるのは幹事長レベルですから、まずは幹事長間でもう一度やることが必要ではないでしょうか。

123万円のままなら、本予算に賛成することはあり得ない

Q)本予算に対しては賛成するのか反対するのかどちらでしょうか。また、日本維新の会が最近自民党と近づいてるような形があり、この部分で国民と維新がある意味天秤にかけられてるようなことを見る向きもありますが、玉木さんのご所見は。

123万のままであれば予算に賛成することはあり得ないと思います。とても我々に期待してくれた有権者の思いに応えるものではないし、同時に3党の幹事長間の合意にも私は反してると思いますから、それで賛成することはあり得ないと思いますね。

維新さんがどうするか、これは他党の話なんで我々としてコメントするものではありませんが、ただそれは政府与党としては当然少数与党として予算を精査しなきゃいけないというのが至上命題でしょうから、当然、我々だけではなくて、維新をはじめとした他の野党に、協力を求めて、結果それが両天秤とかスリー天秤になるかもしれませんが、それはある意味、当然のことだと思います。

ただ、私達はそういう政局に与するのではなくて、掲げた政策が実現するなら協力するし、実現しないなら協力できないということで、誰と協力するかというよりも、何を実現するのかというこの原点はぶれずにですね、主張し続けていきたいなと思ってます。

Q)交渉の最低ラインというかこの金額じゃないと賛成できないというラインはありますか

それを言うとなかなか交渉にならないので。
まだ私はここで交渉が全て終わったとは思ってません。

ただ、やはり幹事長レベル、あるいはそれ以上のレベルの話も当然私はありうると思ってますから、ぜひ政府与党におかれてはですね、今の物価高で苦しい状況に置かれている国民の生活や思いに少しでも応えるような、そういう合意をぜひ実現していただきたいし、我々も建設的に協力はしていきたいと思ってますので、ぜひ、一定の合意を引き続き模索してもらいたいなと思いますね。

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