三菱UFJ銀行の元行員が貸金庫から十数億円相当の金品を盗んでいた問題で、半沢淳一頭取が、問題発覚後、初めて会見を開き、謝罪しました。
この記事の写真 三菱UFJ銀行・半沢淳一頭取「私ども三菱UFJ銀行、練馬支店・玉川支店において発生した元行員による貸金庫からのお客さま資産の窃取事案につきまして、信頼・信用という銀行ビジネスの根幹を揺るがすものであると、厳粛に受け止めており、お客さまや関係者の皆さまに心よりおわびを申し上げます」
発覚は10月31日。1カ月以上の沈黙を破り、半沢頭取自ら説明しました。
三菱UFJ銀行・半沢淳一頭取「行為者は、江古田支店と、江古田支店が統合された練馬支店、玉川支店の店頭業務責任者を務めておりました。40代の女性でございます。江古田で初めて貸金庫の統括責任者についてございます。営業課長、権限を持っている支店長代理。現時点で聞いている限り、このようなことをするような人間であったという評価を、現時点では私の方では確認できてございません。(Q.(統括責任者に)なった途端、手を染めた)権限を有したタイミング以降の行為だとみています」
貸金庫は、客の鍵と銀行鍵、2つが揃わなければ開錠できません。
三菱UFJ銀行カスタマーサービス推進部長・向井理人執行役員「予備鍵は、お客さまと貸金庫の新規のご契約をする際に、お客さまに立ち会っていただいて、その場で、専用の封筒に入れて、お客さまの印鑑と、管理者の印鑑の2つの印鑑を用いて封緘をする。今回の事案におきましては、その予備鍵の保管をしているキャビネットを管理する責任者、この方が行為者であった。取り出して悪用した」
元行員の女性は、2020年4月に貸金庫の責任者に昇進しました。被害が確認されたのも、その時期から。信頼を得て預けられた客の鍵を使った犯行は、なぜ、4年半もの間、発覚しなかったのでしょうか。
会見では、半年に1回、子会社によるチェックが行われていたと説明されました。
三菱UFJ銀行カスタマーサービス推進部長・向井理人執行役員「このような事案の発生を防ぐ、あるいは早期に発見するために、私どもでは、銀行の子会社が第三者目線で、定期的に予備鍵の保管状況をチェックする手続がありました。予備鍵の数や保管の状態を確認することになっていましたが、少し不十分な点があり、今回の発見に至らなかった」
発覚後の調査で、女性が顧客に無断で予備鍵を使ったり、貸金庫室に出入りした“ログ”(記録)が見つかりましたが、当時は、誰もチェックしていませんでした。
三菱UFJ銀行・半沢淳一頭取「今回の資金は、投資等に流用しているという供述を得ています。ただ、なぜ、ここまで犯行に手を染めて、これだけ多くのお客さまから資金を窃取するような行為まで至ったかの十分な動機を把握できていません」
いま発覚している約60人、十数億円という被害は、女性の申告によるものです。
三菱UFJ銀行・半沢淳一頭取「現時点で(当該金庫利用者の)約7割に来店のうえで、貸金庫の内容物を確認していただいていますが、このうち数十人のお客さまより、被害の可能性の申し出を受けており、現在、調査をしています」
異変は確かに、ありました。
三菱UFJ銀行カスタマーサービス推進部長・向井理人執行役員「(今年)貸金庫の中の確認をしたい。数件、そういった直前に申し出があったのですが、ただ対応していたのが行為者本人。(貸金庫室に)『お忘れ物がございました』というような回答で(渡して)、その場を無事に終わらせたというか、発覚を遅らせるような手立てをとった」
大切なものを信じて預けている顧客。
三菱UFJ銀行の貸金庫利用客「安全だと思っていたものが急に崩れた。次の更新までに解約するつもりです」
金融庁は16日、三菱UFJ銀行に対し、原因究明や再発防止策の報告を求める『報告徴求命令』を出しました。今後の報告を受けて、処分についても検討する方針です。
女性は、銀行の調査に応じていて「共犯者はおらず、1人でやった」と話しているということです。
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■封筒に“予備鍵” 管理は適切?◆銀行と顧客の信頼の上で成り立っている契約。その信頼関係の根幹が揺らぐ、異例の事態です。
貸金庫には、“預けてよいもの”が定められていて、例えば、預金通帳などの重要書類や、貴金属・宝石といった貴重品などを預けることができます。
別のメガバンクで支店長を務めていた経験のある菅井敏之さんは「貸金庫の中身を銀行側は見ない。明細もないので、何が預けられているかわからない。現金を預けるのは、“好ましくない”とされているが、中身のチェックをしていないので、顧客を信用している形だ」といいます。
貸金庫を開けるには、顧客が保管する“お客さま鍵”と、銀行保管の“銀行鍵”の、2つの鍵を使ってロックを開ける必要があります。“お客さま鍵”には、紛失などに備えた“予備鍵”があり、銀行が保管しています。“予備鍵”は、契約の際、その場で専用の封筒に入れて、顧客の印鑑と、銀行側の管理者の印鑑の2つの印鑑を使って封をしています。
三菱UFJ銀行によりますと、「第三者目線でチェックするため、半年に一度、予備鍵の個数や保管状態などを、子会社が点検していた。手続き上、“封筒が破れていないかどうか”の確認は定められていたが、“どのように確認するか”が明確でなかった」といいます。
今後は、“予備鍵”の店舗管理をやめ、本部での一括管理にするということです。
菅井さんは「貸金庫事業は、顧客サービスの中では、付随的な業務。封筒での管理方法は、一般的に数十年前から同じシステムで、
長い間、アップデートをしてこなかった」といいます。点検方法に関しても、「本来であれば、1つ1つ“割り印が破られていないか”など、確認をするべきだが、規定や運用ルールもないことが多く、鍵の数を数えているだけではないか」 としています。再発防止策としては「鍵を“本店で一括管理”することは有効」としたうえで、封筒の素材そのものを不正に開封されたときに、チェックしやすいものにするなどの対策も必要」と指摘します。
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