サントリーホールディングス(HD)は12日、創業家出身の鳥井信宏副社長(58)が社長に昇格する人事を発表した。創業家出身者が社長に就くのは、2014年以来約10年ぶり。新浪剛史社長(65)は代表権のある会長に就く。佐治信忠会長(79)は留任し、会長2人の体制になる。25年3月の株主総会を経て就任する。
サントリーHDは、創業者の鳥井信治郎氏、佐治敬三氏ら4代続けて創業家出身者が社長を務めてきた。14年に5代目として、三菱商事出身でローソン会長だった新浪氏が経営トップとなった。
信宏氏は父が3代目社長の鳥井信一郎氏で、信治郎氏のひ孫に当たる。11年に飲料事業などを手掛けるサントリー食品インターナショナル社長に就任。22年からは国内の酒類事業を手がける「サントリー」の社長なども務め、早くからサントリーHDの社長就任が見込まれていた。
新浪氏を社長に招いた14年以降、海外展開を強化した。買収した米大手ビーム社(現サントリーグローバルスピリッツ社)を軸に、国産ウイスキーの海外販売や欧州飲料メーカーの買収などを進めた。24年6月中間連結決算では、売上高に当たる売り上げ収益で、事業に占める海外の比率が51%まで拡大。売り上げ収益全体は23年12月期に3兆2851億円を計上し、新浪氏就任前の13年12月期(2兆402億円)と比べ、1・6倍以上に増えた。新体制では海外を新浪氏が担当し、国内を信宏氏が担う。
12日にサントリーホール(東京都港区)で記者会見した信宏氏は「『やってみなはれ』と『利益三分主義』の創業精神を決して絶やすことなく、強烈なオーナーシップを持ってグループ(従業員)4万人の先頭に立って果敢に挑戦する。やんちゃに楽しみながら進めたい」と語り、国内酒類事業の盤石化や収益力の強化を目指す考えを示した。
同席した新浪氏は社長就任時に佐治会長から信宏氏を次期社長として育てるように託されたと明かし、「信宏新社長ならではのリーダーシップを発揮して、素晴らしい経営者になってもらいたい。二人三脚でこれからのサントリーグループをさらなる高みに引き上げていく」と述べた。
海外は好調のサントリーHDだが、今後は国内のビール市場で存在感を示すことが急務となる。信宏氏は「ザ・プレミアム・モルツ」を主力商品に育て、08年に初のシェア3位を獲得。昨年4月には新商品となる「サントリー生ビール」を売り出した実績がある。信宏氏は「ビールはサントリーの魂。より一層おいしいビールを届けたい」と力を込めた。【加藤結花、道永竜命】
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