客などから理不尽な要求や暴言などの迷惑行為をされる「カスタマーハラスメント」。

行き過ぎたカスハラに対し、氏名の公表を含む条例案を提出する自治体も。

忘年会シーズンを迎える中、迷惑な酔っぱらい客への対応とは。

■閉店後の飲食店 ビールを出すよう要求する客

閉店後の飲食店にぶらりと現れ、ビールを出すよう要求する男性。

【店主】「いやでも、もう店終わっているから」
【客】「うるせえ!ビールだ」
【店主】「いやビールは出せないです。店終わりました」

店主が断ると男性はカウンターの上にある椅子を次々と落とします。店主が名前と連絡先を尋ねると何度も殴ってきました。

■大手牛丼チェーン店で客がスマホ撮影しながら店員に謝罪要求

一方、こちらは大手牛丼チェーン店で撮影された映像。

【客】「あんた店長だってさっき自分で言ったよな。うそついてんの?」

頭を下げる店員の姿をスマホで撮影。注文をめぐってトラブルになり店長代理が謝罪しましたが、男性客はヒートアップ。

【客】「うそついて言ったんだね、『店長だって』ね。あんた自分が店長だと言ったよ」

このような客からの理不尽な要求や暴言などの迷惑行為は「カスタマーハラスメント」、いわゆる「カスハラ」と言われていて、ことしの流行語大賞にもノミネートされました。

■飲食業の男性「電話かかってきて『お前、金払うんか』みたいな」

街の人に聞いてみると…。

【飲食業の男性】「駅前で飲食店をしてるんですけど、お客さんが自分でお肉を焼いてたんですけど、『油が飛んでシミになったんやけど、これ責任取ってくれるか』みたいな電話がかかってきて、『お前、金払うんか』みたいな」

(Q:実際お金は払った?)
【飲食業の男性】「いや、その電話だけで実際お金を払うとかはなかったですけど」

(Q:カスハラは今後どう対応していけば?)
【街の人】「まあ1回ぐらいじゃあれやけど、同じ人が何回も来て同じこと言うのは、もう出入り禁止にしてもいいんちゃうかなと思うけど。だっていいお客さんもなんぼでもおるんやから」

■カスハラ対策 職員の名札をひらがなにした自治体

カスハラをめぐっては、ことし8月奈良県・生駒市で逮捕者が出る事態に。

【男(50代)】「俺を敵に回したら、恐ろしいことになる。市役所にいられなくしてやる」

生駒市役所を訪れた男が、職員に対しおよそ40分間怒鳴り続け、男は公務執行妨害の疑いで逮捕。その後起訴されました。

それから生駒市役所では、職員の名札をひらがなの名字だけにするなど安全対策を行っています。

■三重・桑名市ではカスハラ防止条例を提出

過度なカスハラをめぐっては、4日、三重県・桑名市で市長が全国初の「氏名の公表を含む」制裁措置がついたカスハラ防止条例を提出。

相談を受けた対策委員会が「悪質」と判断した場合は、対象者に「警告」。

それでも繰り返されたら市はホームページなどで名前を公表する「制裁措置」をするとしています。

■大手ファーストフード店ではポスターを掲示

師走に入り忘年会シーズン。ついついお酒が入ると懸念されるのが酔っぱらった客からのカスハラです。

【日本酒と炭火焼き まぐまらし 上田駿多店長】「酔っぱらっているお客さんとかに暴言はかれることは何回かありました。僕からしたら全然普通に対応していたんですけど、お客さんが『お前なんやねん、その対応なんやねん』って」

大手ファーストフード店では、店内にカスハラに当たる行為を示したポスターを掲示。

しかし、個人で経営するような小さな飲食店では、カスハラに遭遇した場合、対応に悩むといいます。

【日本酒と炭火焼き まぐまらし 上田駿多店長】「大企業ほどマニュアルとかできないので、そこは難しい。強気に出てしまうと(お客さんが)SNSで流したりとか、そこが怖い部分はあります」

■タクシー会社の研修は“リアル”

酔っぱらい客の対応に困るのは飲食店だけではありません。

【未来都タクシー 田上鉄郎教官】「今から忘年会シーズン、いろんなお客様がおられます」

大阪府守口市にあるタクシー会社では、12月5日、新人ドライバーに向け“迷惑客を想定した”研修が行われていました。

【新人ドライバー】「ご乗車ありがとうございます。どちらまでお送りいたしましょうか?」
【教官】「これまっすぐ行って、今市の交差点」

【新人ドライバー】「目的地付近まで到着しました、お客様…」
【教官】「よっこらしょのしょ」

【新人ドライバー】「4800円でございます」
【教官】「いつもこの距離タクシー乗るけど、4500円超えたことないんやで。なんで4800円なるんや。俺が寝てることをええことに、遠回りしたんちゃうんけ」

たじたじになる新人ドライバー。泥酔客(教官)のカスハラはさらにエスカレートします。

【教官】「説明せえや!納得したら払ったるわい」
【新人ドライバー】「お客様のご指定のコース通り走りまして…」
【教官】「このコースは何回も通ってるちゅーねん。何回もタクシー乗ってるねん。はよせえや。スナックいかなあかんねん、スナック『ガラパゴス』のママが待っとんねん」

新人ドライバーはどんどん追い込まれます。

■正規の料金を取り損ねてしまった新人ドライバー

【教官】「4500円置いとくわ」
【新人ドライバー】「もしお支払いしていただけない場合であれば…」
【教官】「違うがな、払う言うてんねや。納得すれば払う言うてんねや。もう待たれへん」

【新人ドライバー】「申し訳ございません、ドアをお開けいたします」
【教官】「最初からそないして言ったらええねやもう…」

正規の料金を取り損ねてしまいました。

【教官】「はい、降りといで。パニックったらあかんのよ。『会社によって料金は変動いたします。いつどの車に乗っても同じ料金ということははありえません』と」

ド迫力な演技で新人ドライバーに指導する熱血教官。

■行き過ぎたカスハラは犯罪行為

この日は社長も視察に来ていて研修を受けました。

【未来都タクシー 青柳直樹代表取締役】「ありがとうございました、またのご乗車お願いします」

【田上鉄郎教官】「すごい、すごいです。でもお忘れ物の確認が遅かったですね」

教官もサラリーマン。社長にはソフトな指導です。

【田上鉄郎教官】「こちらが毅然とした対応をすればお客様も『そうなんだ』と。ふにゃふにゃとなると、お客さまとしても、『なんやねんしっかりせえよ』と。クレームの時点だとまだ問題ではないんですが、カスハラとなると、私たちとしてもドライバーを守りたい」

トラブルが起きないのが一番ですが、行き過ぎたカスハラは犯罪行為になることを忘れてはいけません。

■クレームとカスハラの違いは?

カスハラについて、ココロバランス研究所の島田恭子代表に聞きました。

「カスハラ」とは、態度・言動と要求内容のかけ算だということです。

態度・言動とは、攻撃的な態度や嫌がらせ行為などのことです。

要求内容とは、例えばラーメン店で「味が濃い」というのはクレームです。ここでもし「味が濃いから無料にしろ」というと、提供サービス以上の要求ということで、カスハラとなり得ります。

客側が冷静に言ったとしても、これが過度な要求だったらカスハラになり得るということです。

島田恭子代表によると、「クレームは消費者から大事なメッセージである。ただ悪質なクレームになるとカスハラになる。お客様は神様ではなく、お互いさま」ということです。

■「日本はお客様が神様すぎた」と浜田敬子さん

【ジャーナリスト 浜田敬子さん】「日本はお客様が神様すぎたと思います。無料のサービスとして、企業は提供してたわけですけども、過剰な要求になってますよね。企業は人手不足で困っているので従業員が、そのお客様のお客さんから過剰な要求に対してメンタルヘルスが不調になって辞められたら、一番困るし、職場が回らなくなってしまうから、従業員を守りたいっていう気持ちも非常に強いと思います」

【ジャーナリスト 浜田敬子さん】「ただ、個人の商店とかだと難しいんですけど、ファーストフードのチェーンがポスターを貼ってましたね。例えば 商店街で共通のものを作って貼っておくだけで、我に帰る人っていると思うんですよ。抑止効果にはなるんじゃないかなと思います」

【関西テレビ 神崎博報道デスク】「客側の意識を変えていかないといけないと思います。ここまでやったら『カスハラ』というような条例を制定する。すると、こんなことをやったら罰せられるかもしれないと意識が変わるかもしれない。条例制定も一つのきっかけになるかもしれないです」

(関西テレビ「newsランナー」 2024年12月6日放送)

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