2023年度の移住相談先のトップは宮崎県――。働き方の多様化やゆとりある生活を求める人々の増加など、地方への移住が注目されている。総務省によると、全国の自治体が受け付けた移住相談の件数は40万件を超え、調査を開始した15年度以降で最も多かった。宮崎県は前年度から約2・6倍に増加し、福島県は4年連続で3位にランクインした。何が起こっているのか。
自治体の移住相談窓口などに寄せられた移住相談件数は、合計で40万8435件。都道府県別トップの宮崎県が2万2548件、次いで長野県が2万586件、福島県が1万8603件と続いた。
宮崎県の相談件数のうち約7割を占めたのが、人口約16万人の県内2位の都市、都城市だ。相談件数は22年度の2496件から23年度は1万5358件と急伸し、実際に移住した人も22年度の435人から23年度は3710人と急増。都城市は13年ぶりに人口増に転じた。
その原動力となったのが、国や県の制度を上回る市独自の移住支援制度だ。
国の制度は、東京23区の在住者か在勤者を対象に、最大で単身者に60万円、世帯に100万円を支給する。
都城市は、地元産の肉類や焼酎などの返礼品が人気を集め、ふるさと納税の寄付金が全国最多。その豊かな財源をもとに、全国どこから(近隣の3市町を除く)の移住でも支援対象に含めて間口を広げ、市内のどこに移住するかに応じた加算も設定した。支給額は、1世帯あたり最大500万円に上る。
一定の政策効果があったことで、24年度は支給金額を減らすなど一部縮小したものの、4~10月の移住者数は1160人と、前年同期の1041人とほぼ変わらない水準を保っている。
市の担当者はその要因として、現状でも国や県より支援制度が有利なこと、さらに子育て施策や学校、病院の充実などを挙げる。「支援金は移住の契機になるが、住み続けるためには生活のしやすさも必要。都市機能とのバランスがとれた『ちょうどいい田舎』と評価されている」と話す。
一方、相談件数3位に付けた福島県は20年度以降、4回連続で3位に入る。実際に移住した人も右肩上がりに増え、県が把握しているだけでも15年度に111人だったのが、23年度は3419人と急増している。
福島県は、都道府県が設置する常設の相談窓口の数が12カ所と最も多い。移住イベントにも力を入れ、11月9日には県内の全59市町村が参加した大規模イベントを東京都内で開催。過去最多という約300人が会場を訪れた。
県は、11年に発生した東京電力福島第1原子力発電所の事故で、避難指示などの対象となった12市町村への移住を促進する施策を展開。移住支援金は、最大で単身は120万円、世帯は200万円と国の2倍に上積みし、対象も福島県外からの移住であれば「利用可能」に緩和した。
23年度の福島県への移住者3419人のうち、12市町村は839人と、4人に1人を占める。その要因について県の担当者は、手厚い支援金に加え「住民がいなくなった町を新しく築いていきたいといった目的意識を持った人もいる」と話している。
経済的支援は移住を後押しする。さらにその土地で、どのような生活を送ることができるのかといった見通しも移住施策の成果を上げるカギのようだ。【嶋田夕子】
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