特集は異業種への挑戦です。長野県上田市の自動車部品メーカーがコーヒーの栽培に乗り出し、この程、初めて豆を収穫。早速、試飲会が開かれました。気になる味はどうだったのでしょうか。
■自動車部品メーカーの新たな挑戦
会議室に集まった企業の幹部。視線の先にあるのはコーヒーです。
それも、こちらの企業が手掛けた「自社製コーヒー」。
ここは上田市の「アート金属工業」。
エンジン用ピストンで国内シェアNo.1を誇る部品メーカーです。
■なぜコーヒー栽培?
そのアート金属がコーヒー栽培にチャレンジ。
2023年6月、本社工場の敷地に農業用ハウスを建て、「ティピカ種」の苗木40本を植え、育ててきました。
なぜ、ものづくりの会社がコーヒーを?
アート金属工業・三城伸五社長(当時):
「電気自動車が増える中で、主力製品のピストンの生産提供が減っていくという危機感があるので、それを新しい事業で補っていきたいといろんな事業にチャレンジすることに」
■担当の技術者は当初は戸惑いも
電気自動車の普及でピストンの先細りが懸念される中、会社は「多角化」を模索。社員から出た意見で最も多かったのが「農業への進出」でした。
上田城跡公園に近いため、「観光農園が良いのでは」ということになり、コーヒーを栽培してカフェも作ろうと、挑戦を始めました。
専従の担当に任命されたのが経営企画部の竹内仁士さん(59)。元々、技術者で農業経験はゼロでした。
コーヒー担当・竹内仁士さん:
「本当にびっくりしたし、戸惑いもありました」
■難しい温度管理…毎日、試行錯誤
初めてのコーヒー栽培。
竹内さんは岡山県の農園で1カ月半、育て方を学びました。
育てるハウスにも工夫。地下水を利用したヒートポンプシステムや温度で自動開閉する窓を導入し、温度管理を徹底。
寒さを乗り切る環境を整えました。
コーヒー担当・竹内仁士さん
「暑さは暑さできつかったし、冬はやったことないし、どうやって温度管理していいか毎日、試行錯誤しながら」
■今年コーヒー豆に出来たのは70g
すると、半年後にはコーヒーの実がー。
2023年の12月から少しずつ収穫が行われました。
収穫できたのはおよそ500グラム。果肉などを取り除いて「豆」にできたのは、70グラムほどでした。
亀山珈琲焙煎所・亀山陽介店主:
「いい香りですね」
4月16日、本社で開かれた試飲会。
市内で専門店を営む亀山陽介さんに焙煎からドリップを依頼しました。
■社長「いい香りですね」
挽きたての香りはー。
アート金属工業・三城伸五社長:
「いい香りですね」
竹内さんもー。
貴重な初収穫の豆から作ったコーヒー。
小さな試飲用のカップに丁寧に移してー。
■香りも味も想像を超える
いよいよ試飲―。
「乾杯」
アート金属工業・三城伸五社長:
「飲んだ時に香りも味も想像を超えてました。もっと木がしっかりして大きな実ができるようになれば、また一段と違う味と香りになると思う。(また)1年間いろいろ取り組んでもらって判断すべきだろうと思うが、期待は高まった」
アート金属工業・長田英孝執行役員:
「初めて作ったものにしてはよくできてるなと思う。彼らの夏の暑い中、冬の寒い中、ハウスの中でかわいがって育ててきた姿を見ているので、それをいただいているという感じで(胸に)熱いものがあります」
■担当者「苦労も吹き飛ぶ」
苦労を重ねてきた竹内さんはー。
アート金属工業・竹内仁士さん:
「おいしいですね、やっぱり。今まで飲んだコーヒーにこんな味はなかったです。皆さんに喜んでもらえる、それは感無量です。苦労がなんか吹き飛びます」
記者も特別にー。
(記者リポート)
「それでは貴重な一杯をいただきます。香りから、さわやかないい香りがします。いただきます。とてもフルーティーな香りがします。酸味や渋みもそれほど強くなく、すっきりとした味わいです」
■珈琲店主「素晴らしい」
「プロ」も太鼓判―。
亀山珈琲焙煎所・亀山陽介店主:
「飲んだ第一印象が、『甘さがあるな』と。品質が良いコーヒーじゃないと、甘さはなかなか出てきづらい、素晴らしいものだと思う」
■5年以内の商品化目指す
現在、苗木は、高さ2メートル以上に成長。2025年の冬には、今回の10倍ほどの収穫が見込めるということです。
アート金属では、遊休農地も活用して生産量を増やし5年以内の商品化を目指しています。
アート金属工業・竹内仁士さん:
「これは趣味じゃないと、本当に大きな事業体として、うちの会社の太い柱になっていければ。途中でやめるわけにはいかないので、これからも頑張って続けていきたい。『絶対に作れる』という自信はあります」
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