福岡の銘菓として親しまれてきたチロリアン=福岡県新宮町の千鳥饅頭総本舗セントラル店で2024年3月13日、井上和也撮影

 サクッとした食感の筒状のクッキーと、中に詰まったクリームの甘さがマッチした「チロリアン」。福岡で親しまれる洋菓子は、1630(寛永7)年創業の千鳥饅頭総本舗(福岡市博多区、原田浩司社長)の看板菓子の一つだ。

 発売は1962年。それまで丸ボーロ、千鳥饅頭、かすていらが主力商品だったが、原田社長の父光博さん(故人)が、自身の兄と「新商品を」と開発した。

 生かしたのは光博さんが北海道で修行した際に覚えた生クリームを使ったクッキーや、京都のせんべいの製造技術。洋風巻きせんべいとして売り出すと行列ができた。

 「千鳥屋」の屋号が博多弁で「ちろりや」と呼ばれていたこともあり、「『ちろりや』の餡(あん)」をもじって商品名になった。英語でオーストリアの「チロル地方の人々」を意味することから、「チロリン村の仲間たち」をイメージしたキャラクターも誕生した。

 チロリアンは長さ10センチのロングと同4・5センチのショートがある。クリームは当初、バニラ、ストロベリー、コーヒーの3種だったが、後にチョコが加わった。現在はあまおうやマンゴー、嬉野紅茶など九州ならではの味も加わり約20種類を展開。2023年は年間2900万本を生産した。

 60年を超えて愛される理由を、原田広太郎専務は「原料にこだわったおいしさ、そしてネーミングにある」と語る。

 21年から米国やシンガポール、台湾、ベトナムに輸出も始めた。「『懐かしい』から『当たり前』と思われるお菓子にしたい」と原田専務。チロリン村の仲間たちと「いつかは全世界に」と夢を見ている。【井上和也】

千鳥饅頭総本舗

 1630(寛永7)年、原田家が佐賀県に「松月堂」の屋号で創業。1927年に福岡県飯塚町(現・飯塚市)に「千鳥屋」開店。49年に福岡本店として福岡市に進出。97年に千鳥屋ファクトリー設立、2004年に千鳥饅頭総本舗に社名変更。

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