百貨店が、株高などで増加する富裕層へのアプローチを強化している。福岡市内の百貨店でも、従来から富裕層と接点を持つ強みを生かしつつ、相対的に手薄だった若年富裕層を意識したサービスを展開する。海外客の取り込みも見据える。【植田憲尚】
大丸福岡天神店は10月下旬、富裕層向けスペース「Kujaku Salon TENJIN(クジャク サロン テンジン)」の営業を始めた。従来の同種スペースから7倍近い約560平方メートルで、九州最大級という。
東館エルガーラ5階にあり、年間100万円以上買い物をした顧客が利用できる。九州各地の工芸品などを配置したほか、美容サロンも整備。各種セミナーも開催予定で、さまざまなサービスを同じ場所で提供できるのが強みだ。
運営会社の博多大丸の村本光児社長は「この場所を使った企画とプランをしっかりして、いかに存在感を示せるかだ」と意気込む。30~40代の若い富裕層も意識し、2025年度にはアート作品の発信拠点も設ける予定だ。
施設の利用は国内の顧客が対象だが、福岡市内のインバウンド(訪日客)の増加もあり、今後は海外富裕層へのアプローチも検討課題になるという。
岩田屋本店は21年3月に富裕層向けの「ラウンジS」をオープンしている。「旅行や高級外車、教育、暮らしの困りごとなどにも対応している」(広報担当者)といい、これまでは百貨店で取り扱っていなかったメニューを追加した。化粧品や宝飾、時計、現代アートなども強化し、若年富裕層を取り込んでいる。
岩田屋本店を含む三越伊勢丹グループでは、海外の顧客や富裕層取り込みを見据え、25年春に新たなアプリを稼働予定だ。一度来店した訪日客の関心事を分析し、双方向コミュニケーションを通じて関係を深めていくという。
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