C-United株式会社の代表取締役社長・友成勇樹氏
<店内で自由に喫煙できる「THE SMOKIST COFFEE」が2024年11月に4周年を迎えた。禁煙化が進む飲食業界において、全席喫煙可能な「喫煙目的店」を立ち上げた理由とは何か。その背景にあるビジョンや、喫煙者と非喫煙者が快適に共存できる社会の実現に向けた取り組みについて、運営元C-United株式会社の代表取締役社長・友成勇樹氏に話を聞いた>
「文化」と「需要」に応えた「新たな一歩」
現在、都内に4店舗、仙台に1店舗を展開する「THE SMOKIST COFFEE」。その創業のきっかけは、コロナ禍で赤字に陥った別ブランド店舗を建て直すための対応策だったという。
「『THE SMOKIST COFFEE』に転換したのはコロナ禍で赤字が続いていた店舗で、その額は悪い月で200万円以上になることもありました。通常なら閉店が選択肢になりますが、弊社のモットーは『街の財産となる店づくり』。閉店は避けたいと考え、データを見直したところ、喫煙率の高い地域に位置する店舗が多いことが分かりました。また、コロナ禍で喫煙所の利用が制限され、喫煙スペースを求める声も増えていました。そこで、赤字店舗を『喫煙目的店』へと業態変更し、新たな需要を掘り起こすことを決断しました」
転換前の店舗には喫煙ブースがあったが、現在は全席喫煙可能な店舗へと生まれ変わった。喫煙環境を充実させた背景には、友成氏の「文化」と「需要」への思いがあった。
「喫煙者は男性で約25%、女性で約6%程度います。この規模のお客様を外食産業が無視するわけにはいきませんし、より良い環境で喫煙と飲食を楽しんでいただきたい。また、昭和の喫茶店文化──コーヒーとタバコで一息つき、仕事に向かう活力を得る文化を大切にしたいと考えました」
歩きタバコを目にすることが少なくなるなど喫煙マナーの向上も見られる昨今、友成氏はこう語る。
「さらに、弊店のような心地よい環境で喫煙できる場所が増えることで、街の美化が進み、非喫煙者の方々もより快適に過ごせる環境が整うのではないでしょうか」
「4分に1度」の空気循環で清潔な空間をキープ
より良い喫煙環境を実現するため、「THE SMOKIST COFFEE」では厚生労働省の基準を大幅に上回る空気清浄システムを導入している。
「通常の空気清浄機は給気口と排気口が近い位置に設置されている『ショートサーキットシステム』ですが、これでは排出したきれいな空気を再び吸気するなど、効果が半減してしまいます。弊店では給気口から吸った汚れた空気を、天井裏に通したダクト内できれいな空気へと清浄し、離れた位置にある排気口から排出する『ロングサーキットシステム』を採用し、4分に1回以上空気を循環させることで、室内をクリーンに保っています」
「これは、厚労省が新型コロナウィルス感染症予防を目的に商業施設等で推奨する換気回数『30分に1回』の8倍以上の回数です。また、電子式集塵フィルターを内蔵し、タバコの煙から発生する粉塵(0.3μ以上)を95%以上除去する大型の集塵装置を配置し、匂いを抑制しています。全5店舗でこのシステムを搭載していますが、1店舗につき約500万円の設備投資が必要です」
非喫煙者から寄せられた「好意的な反応」
「THE SMOKIST COFFEE」は改正健康増進法が定める「喫煙目的施設」に該当し、席で喫煙しながらの飲食が可能だが、「主食を除く」という制約がある。
「例えば、カレーにルーをかける、パスタにパセリをふりかける、といった調理ができません。この制約に合わせ、行政と相談しながら商品開発を進めました」
だが、この規制は「人件費削減」というメリットももたらしたという。
「従来店では運営に5〜7名必要ですが、『THE SMOKIST COFFEE』なら2〜3名で対応できる。時給は他の店舗より高めですが、それでも人件費を大幅に抑えられました」
開業当初は非喫煙者からのクレームを心配していたが、結果は好意的な反応が大半だった。「喫煙マナーが改善されて嬉しい」という声や、喫煙者からの空気環境への高評価が寄せられ、業績もオープン後半年で赤字は半額に、1年後には黒字へと転換し、4周年を迎えた現在も好調を続けている。
焙煎所設立の背景にある「雇用」への思い
フランチャイズ展開に関する問い合わせも多く、さらなる店舗拡大が期待される一方で、同店は改正健康増進法が定める『喫煙目的施設』に該当している。そのため、2020年に法が全面施行されてから5年が経過する2025年には、経過措置の見直しや新たな規制が課される可能性があるため、慎重な判断が求められる状況だ。
「この先5年間改正が『ない』との確約があれば、フランチャイズ展開も検討できるかもしれません。しかし、来年には大阪・関西万博が開催され、さらなる法改正の可能性がある現状では慎重にならざるを得ません。弊社は『街の財産となる店づくり』をモットーとしているため、新規出店についても慎重に進めたいと考えています」
一方で、同社は進化を続けている。今年6月には自社の1階に焙煎所を設立。日本ではまだ数台しか導入されていないアメリカ製の全コンピュータ制御焙煎機を導入し、「THE SMOKIST COFFEE」の全5店舗で使用する豆の焙煎を開始した。
「この焙煎所では、6名のロースター全員が障がいのある方々です。皆、生き生きと働いてくれており、その姿はとても頼もしいです。現在、従業員40名以上の企業には全従業員の2.5%を障がい者雇用する義務がありますが、私たちはその法定雇用率にとらわれることなく、さらに障がい者雇用を拡大していきたいと考えています」
喫煙者と非喫煙者が共に快適な社会へ
先進的な空気清浄システムを導入し、快適な喫煙空間を提供することで、喫煙可能店舗の利用拡大を図ると同時に、周辺環境への配慮にも取り組んでいる。友成氏は、「こうした社会貢献につながる店舗づくりを実現するためには、私たちだけでは限界があります。行政や関連企業との連携が欠かせません。4周年を迎えるにあたり、さらなる協力体制の構築を積極的に検討していきたい」と語る。
地域全体の環境改善を目指す中で、「THE SMOKIST COFFEE」のような喫煙可能店舗の取り組みを行政が支援することには、大きな意義があるのではないだろうか。一方的な規制では解決が難しい課題に対し、喫煙者と非喫煙者が共存できる新たな街づくりの可能性が広がるだろう。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。