写真はイメージ=ゲッティ

 共働き世帯が増加する一方で、家事負担の割合が女性に偏った状態が今も続いている。三井住友信託銀行が国内外の各種統計を基に、家事分担について実態を検証し、リポートにまとめた。解決策は、家庭の努力だけで可能なのか。

 総務省の労働力調査などによると、現役世代(15~64歳)の世帯のうち、共働き世帯は2023年時点で7割超を占め、10年前の6割超から増加した。一方で男女が1日に家事をする時間は、11年は女性228分に対し、男性は36分とその差は6・4倍。21年は女性204分に対し、男性は46分とやや差は縮まったものの、まだ4・4倍の差があり、女性が家事の主な担い手になっている状況は続いている。

 ただ、若年層では状況は変わってくる。男女間の家事時間の差は、妻の働き方が無職▽非正規▽正規――の順で大きいのはどの世代でも共通するが、子供がいない「夫婦のみ」の35歳未満の世帯では、それ以上の年代に比べ、男女間の家事時間の差は少ない。比較的若い世代が考えられる「末子が未就学児」のケースでも同様だった。

 リポートをまとめた三井住友信託銀行調査部の貞清栄子さんは、学校教育などをきっかけに、性差による役割分業にこだわらない意識が若い世代に広がっていることを指摘している。

 国際的にみた日本の状況はどうか。

 経済協力開発機構(OECD)が日本を含む加盟主要国の家事と有償労働時間を比較したデータによると、どの国も総じて女性の方が多く家事を担っているが、男女間の家事時間差の大きさで、比較した27カ国中トップのトルコに次いで日本は2番目だった。女性の就業率が高まると家事分担が進む傾向にあるが、トルコは女性就業率が30%台と低く、日本の女性就業率(73・3%)と同水準のドイツでは男女の家事時間差が1・6倍、カナダでは1・5倍と男女間の差が少なかったのに対し、日本は4・4倍と格差が鮮明だった。

 家事時間差が大きいのは、男性の家事時間が極端に少ないことが一因ではあるが、男性にも言い分がありそうだ。

 同じOECDのデータによると1日当たりの「有償労働時間」の男性トップは日本の442分で、家事時間の47分と合わせると、総労働時間は489分に上る。総労働時間では、女性との家事時間差が少ないカナダと同じ(有償341分、家事148分)で、最も家事時間が長いデンマーク(有償260分、家事186分)を上回った。なお、日本女性の総労働時間は500分。日本人は比較国中、トップ級に時間を労働に費やしている。

 内閣府の調査で「家事を平等に担いたい」との意向は約7~8割と高いが、男性の有償労働時間が減らなければ実現不可能だ。「男性が家事などに参加するため必要なこと」を尋ねた質問で、19年は「夫婦間のコミュニケーション」がトップだったが、22年には「職場における上司や周囲の理解を進める」が抜いた。

 貞清さんは「管理評価する立場の年代の意識の問題が大きそうだ」と指摘。労働力不足にあえぐ企業が働き手を確保するためにも、短時間正社員制度の導入などを例に挙げ、「柔軟な働き方の選択肢を増やし、家事分担を可能にする取り組みを進めることが重要」と助言している。【嶋田夕子】

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