バットを原材料にしたビールで乾杯する試飲会参加者たち=北海道北広島市のエスコンフィールド北海道で2024年11月16日午前11時14分、谷口拓未撮影

 プロ野球選手の折れた木製バットを原材料にしたビールができた。クラフトビール「よなよなエール」で知られるヤッホーブルーイング(長野県)がファンと一緒に完成させた。これまで破損したバットは箸などに再利用されてきたが、ビールへの活用は異例という。バットはどのように生かされているのか――。【谷口拓未】

 ヤッホーブルーイングは、さまざまな味わいや香りを楽しめるクラフトビールを醸造し、缶ビールなどで販売する。プロ野球・北海道日本ハムファイターズの本拠地、エスコンフィールド北海道(北広島市)のグラウンド中堅後方で醸造所併設のビアレストラン「そらとしばbyよなよなエール」を運営し、生ビールなども提供する。

 原材料の一部に木片を用いて香りづけする種類のビールがあり、ヤッホーブルーイングは今回、日本ハム側にコラボレーションを提案し、選手の折れたバットを提供してもらえることになった。提供者は、選手会長の松本剛▽アリエル・マルティネス▽郡司裕也▽田宮裕涼▽野村佑希▽水野達稀--の6選手。

 バットを細かい木片にしてオークチップとともに水蒸気蒸留し、香りを含んだ蒸留水を抽出。醸造過程のビールに加え、香りや味にアクセントをつけるレシピにした。ちなみに、蒸留水の香りから選手を判別するのは困難という。ベースとなるビールは、モルトの香りやコクを感じられる茶色の「ブラウンエール」となっている。

 ファンとともに醸造するプロジェクトにしようと、10月にバットの加工体験会を実施。約400人の応募者から抽選で選ばれた約20人が、原材料にしないバットの先端やグリップを切り落としたり、なたを使ってバットを割ったりした。

 加工後、完成までに約1カ月を要し、11月16日に試飲会があった。加工に参加した人を含む約80人が出席し、優しい酸味の後にバターのようなコクを感じる味わいに声を弾ませた。

 加工体験会で郡司選手のバットを解体し、試飲にも参加した日本ハムファンの鈴木絵里菜さん(34)は「正直、バットを持ち帰りたいくらいだった。加工するのがもったいない気持ちもあった」とファン心理をのぞかせつつ、「貴重な経験をさせてもらった。とてもおいしくて、バットをたたき割ったかいがありました」と笑った。

 30日にエスコンフィールドで開かれる日本ハムのファン感謝イベント「F FES2024」から数量限定で一般販売する。そらとしばの広報担当者は「ファンの皆さんとビールを完成させ、Fフェスに向けて盛り上げたかった。クラフトビールの文化や面白さをもっと広めていきたいです」と話した。

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