急成長するソーシャルメディア「ブルースカイ」と「X」のロゴ=ロイター

 新興ソーシャルメディア「ブルースカイ」が米大統領選後に急速に利用者を伸ばしている。トランプ次期大統領を支持する実業家のイーロン・マスク氏が所有するX(ツイッター)に不満を抱える利用者たちの有力な受け皿となっていることが背景にある。

 ブルースカイは19日、利用者2000万人突破を発表した。9月から倍以上に増加した。オンラインのデータを分析する「シミラーウェブ」のまとめによれば、米市場でのブルースカイのアプリ利用は大統領選前の10カ月と比べて500%以上伸びている。1日あたりのサービス利用者ではXに遠く及ばないが、米メタ社がXに対抗して開発した「スレッズ」との差は急速に縮んでいるという。

 ブルースカイのグレイバー最高経営責任者(CEO)はメディア露出を高め、大統領選後は1日あたり100万人以上、利用者が増えていると強調。米公共ラジオNPRのインタビューでは「インターネットは少数の強力な利害関係者によってコントロールされ過ぎている。人々のためのソーシャルメディアを作りたかった」と語っている。

 ブルースカイはツイッターを創業したジャック・ドーシー氏が協力し、2023年春にサービスを開始した。当初は招待制だったが、現在は誰でも利用可能になっている。フルタイムの社員は20人足らずで、24時間体制で急成長に伴う問題に対処しているという。

 一方、米CNNによれば、Xは今月5日の大統領選翌日に11万5000件以上の利用者がアカウントを停止した。22年10月のマスク氏による買収後で最大規模の減少幅と報じられている。

 Xは広告収益の分配を含むさまざまな機能変更が行われた結果、インプレッション(表示)回数を稼ぎたいユーザーが大量に生まれ、「カオス化」したとの指摘が絶えない。英米に拠点を置く非営利組織「デジタルヘイト対策センター」(CCDH)の分析によれば、米政治をめぐる虚偽や誤解を招く内容の投稿は、ファクトチェックされた投稿の10倍以上閲覧され、マスク氏自身も選挙をめぐる誤情報を拡散した。

 大統領選の結果を受けた著名人や知識人を含むXの利用者離れは、英語の脱出(exodus)をかけた造語で「X-odus」(エクソダス)とも呼ばれている。

 700万人超のフォロワーを抱える米人気作家のスティーブン・キングさんは14日、「ツイッターを去る。とどまろうとしたが、あまりにも有害になった」と投稿。スレッズの自身のアカウントをフォローするようファンに呼びかけた。

 英紙ガーディアンは今月13日、X公式アカウントへの投稿を中止すると発表。陰謀論や差別的な投稿が多いとした上で、「マスク氏がXの影響力を行使し、自身の政治的言説を作り出していることも浮き彫りになった」と指摘した。スペインとスウェーデンの有力紙も同様の理由でXへの投稿停止を表明した。【ニューヨーク八田浩輔】

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