スタートアップは「戦場」? 若きテック起業家の過激な主張に反響(写真はイメージです) Mitchell Luo-Unsplash

<「ワークライフバランスは幻想」と断言する23歳の起業家。その言葉が、スタートアップ文化のあり方を巡る激しい議論を呼び起こしている>

23歳のテック企業創業者が、ワークライフバランス、そしてスタートアップの企業文化に関して、ネットの世界を広く巻き込んだ議論を引き起こしている。

この人物は、サンフランシスコ在住のダクシュ・グプタで、グレプタイル(Greptile)という企業の創業者だ。同社は、人工知能(AI)を用いてソフトウェア会社のバグ検知を補助するツールを構築している。グプタは先ごろ、自分の会社の過酷な労働環境について、X(旧ツイッター)に忌憚のない見解を投稿し、配下の従業員に対して期待する、非常に厳しい基準を明かした。

グプタは、自身の事業で大いに成果をあげる、特定のタイプの応募者を求めていることを自覚していると述べた。グプタは本誌の取材に、「私は、まさにこうした過酷な環境を求めている者のみを雇い入れたい。単に我慢して受け入れるだけでは十分ではない」と語った。グプタによれば、自身の会社には大手テック企業から転職してくる者が多いが、彼らは、こうした大企業では「仕事が少なく退屈していた」人たちだという。

グプタは自身の投稿で、採用面接の際に、グレプタイルには「ワークライフバランスは存在しない」ことを明確に伝えていると述べた。グプタの説明によれば、この会社での典型的な勤務時間は朝9時から夜11時までにおよび、さらに遅くなることもしばしばあるとのことだ。加えて、土曜出勤、場合によっては日曜出勤も必須だという。「私は、職場環境のストレスが高く、成績不振者に対して容赦しない点を強調している」と、グプタはXに綴った。採用候補者に対しては必ずこの点を伝え、就職後に自身を待ち受けている仕事がどんなものなのかを理解してもらっているという。

人事業務のプラットフォームを提供する企業リモートがこのほど発表した2024年版「グローバル・ワークライフバランス指数」では、アメリカは調査対象の60カ国のうち55位と、最下位に近い順位にランキングされた。アメリカのスコアは100点満点でわずか31.82で、1位のニュージーランドには50ポイント近い差を付けられている。日本(東京)は57.6で24位だった。

対照的に、ニュージーランド、アイルランド、ベルギー、デンマーク、カナダという、この指数でトップ5にランキングされた国々は、従業員に優しいポリシー、週労働時間の短さ、法令で定められた休暇制度などで名高い。例えばニュージーランドは、年間に32日間の有給休暇が与えられる、より穏やかな仕事文化を持つ国として知られている。「アメリカがこのランキングで下位に位置付けられたのは、この国にしっかりと根付いた、人間よりも利益を優先する資本家的な思考の枠組みのためだ」と、人事コンサルタントのブライアン・ドリズコールは、以前の取材で米ニューズウィーク誌に対して語っていた。

グプタの投稿は、もともとは自身のフォロワーたちに意見を求める意図で書かれたものだったが、表示数は150万回以上に達し、たちまち称賛と批判の両方が寄せられた。このXへの投稿は、オンライン掲示板のレディットに引用されたが、こちらでも投稿に対する反応は賛否が入り交じっていた。

recently i started telling candidates right in the first interview that greptile offers no work-life-balance, typical workdays start at 9am and end at 11pm, often later, and we work saturdays, sometimes also sundays. i emphasize the environment is high stress, and there is no...

— Daksh Gupta (@dakshgup) November 9, 2024

この投稿を見たある人物は、「少なくとも、彼は採用候補者に対して、手遅れになる前に退散するように促している」と書き込んだ。一方で、これほど厳しい職場環境の倫理性や持続性に疑問を投げかける投稿者もいた。別の人は、「メンバーが仕事以外の生活を持ち、現実の世界に触れる機会がある方が、チームはより仕事ができるようになる」とのコメントを投稿した。

ネット上は批判の声もあるが、グプタはまったくひるんでいない。「私はそもそも、他人に何を言われても気にしないタイプだ。私は尊敬する人たちから、『君は愚かで、成功できないだろう、君の立ち上げたスタートアップは馬鹿げている』と言われたことがある。見ず知らずの人から同じことを言われても、それと比較すれば全くこたえない」とグプタは述べた。

グプタはさらに、自身の投稿は「すべての人がこうするべき」と指図するようなアドバイスを意図したものではなかったと付け加えた。「大半の人は、こんな生活を送るべきではないと思う」と、グプタは述べ、さらにこう続けた。「私は、自分たちの職場環境を『ペースが速い』『ダイナミック』などと表現して実態を隠すことはしない。そうした表現に引き寄せられた、ある程度のワークライフバランスを求める人が、1週間の労働時間が100時間に達すると聞いてびっくり仰天する事態は避けたいからだ。あえて『ワークライフバランスは存在しない』『ストレスが高い』と表現することで、そうした職場を求め、まさにこうした環境を楽しめる人を選べるようにしている」

一部のネット民からは、グプタの明快なアプローチを称賛する声もあった。「透明性があるのはいいことだ。働き始めた途端に辞職に追い込まれるくらいなら、この会社に入らない方がずっといい」と、あるレディットのユーザーはコメントした。

(翻訳:ガリレオ)

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