陸上養殖設備の水槽にクエタマの稚魚を放流する担当者(左手前)ら=静岡市駿河区で2024年11月7日、丹野恒一撮影

 静岡ガスは、ともにハタ科のクエとタマカイの交雑種「クエタマ」の陸上養殖を、静岡支社(静岡市駿河区)の敷地内で開始した。小型の閉鎖循環式システムを使い、食分野事業への将来的な道筋を探るトライアルとして行う。順調に進めば来夏以降、地元の飲食店向けを中心に出荷も予定している。【丹野恒一】

食分野事業模 索来夏以降、地元向け出荷へ

 トライアルに使われるのは、陸上養殖装置の開発を手掛けるARK社(東京都)のコンテナ型の設備。「どこでもだれでも陸上養殖ができる」のが開発コンセプトで、駐車スペース程度があれば設置できる。

水槽やろ過装置が収まったコンテナ型の陸上養殖設備=静岡市駿河区で2024年11月7日、丹野恒一撮影

 7トンの水槽を備え、水は一度入れれば、フィルターやろ過槽、紫外線殺菌装置などを通すことで、蒸発分の補充以外は基本的に交換不要。12月には水の循環経路内で海ぶどうの養殖も始める。海ぶどうは、ろ過の過程で最後に残った硝酸塩を養分にして育つため、水槽によりきれいな水が戻ってくる相乗効果があるという。

 今月7日、体長17センチ前後のクエタマの稚魚100匹を放流した。年内にさらに100匹追加する。味が良い一方で成長は遅いクエと、成長が早く大きく育つタマカイが交雑されているため、1年程度で体長30~40センチ、1キロの出荷サイズになるという。海ぶどうはさらに成長が早く、順次出荷する。

 静岡ガスによると、こうした小型の閉鎖循環式の陸上養殖は県内初の取り組みとなる。担当する同社経営戦略本部の橘高大輝さんは「今回のトライアルで事業拡大の可能性を探り、地域に根差した陸上養殖を目指す。将来的には、世界的な人口増加によるたんぱく質の供給不足の解決にも寄与したい」と話す。

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