生活用品大手のアイリスオーヤマが新たな成長の柱として力を入れているのが、ロボット事業。3年後にロボット事業の売上1000億円を目指すという大山社長にその狙いなどを聞いた。

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長に聞く「ロボット事業参入」の狙いとは!?

開店前の北千住マルイ。3階ファッションフロアの通路を走るのは、アイリスオーヤマのお掃除ロボット。ルートを設定してスタートボタンを押すだけで、センサーが障害物を検知し、自動で通路を掃除していく。

そして、4月から実験的に導入しているのが、新型の水拭きロボット「BROIT(ブロイト)」だ。
こぼれた飲み物も通過するだけで、キレイに清掃。タンクから水をまいて、ブラシで擦り、水を吸い上げることで床を洗浄する。

マルイファシリティーズ 小口茂久さん:
人手不足が深刻で、高い時給を出しても人が来てくれない。ロボットが清掃することによって、人が他のことができるようになる。

丸井グループは2022年からアイリスオーヤマのロボット掃除機を27台導入している。

マルイファシリティーズ 小口茂久さん:
これからの清掃は、ロボットが主役になって、人はロボットを補佐する役割になる。

なぜ?いま? アイリスオーヤマがロボット事業に注力する理由とは?

――最近、ロボット事業に力を入れている理由は?

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
今は日本国内一番の問題は少子高齢化、人口減で労働者不足が非常に顕在化してきている。
ロボットに対する需要が今非常に伸びているので、今これは参入のチャンスだろうと、市場がさらに今後、日本、世界で大きくなるだろうと捉えて新規参入した。

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
こちらは「BROIT(ブロイト)」。水をまいて、吸い上げて、汚水を溜めておくロボット。今までも業務用の水拭きロボットはあったが、結構水残りがあった。特に食品を扱う小売店は汚い衛生問題が起きるので、掃除残りがないようにした。

この水拭きロボットは、月額6万円のサブスクリプションサービスで、小売店や飲食店を中心に販売する計画だ。

――BtoB(法人向け)掃除ロボの意味は?

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
BtoBだと使われる環境が限定できて、メンテナンスも従業員の方がいるので、ちゃんとしてもらえると。我々、基本的には「ロボットを売るより、サービスを売る」と考えている。トラブルが起きたときもすぐ駆けつけるし、効率的な使い方をサポートする。そのために稼働率やロボットの状況をモニタリングして顧客に提案している。売り切りよりはサブスクの方が継続的なサービスもできる。

2023年、アイリスオーヤマのロボット開発に強力なメンバーが加わった。東京大学出身で、Googleの元エンジニアの小倉崇さんだ。アイリスオーヤマは小倉さんのベンチャーを買収し、ソフトウェアとハードウェアの全てを自社で製造できる体制を構築した。

シンクロボ 小倉崇社長:
我々ベンチャーだと自分たちで量産・保守・広い販売を自分たちの力だけでやり切るのは非常に難しい。我々ベンチャーに足りないところを、アイリスオーヤマが補ってくれる。ロボットのような今までやったことない商品でも恐れずに取り組んでいこうっていうところがあったので、是非一緒にやりたいと思った。

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
やはりソフトウェアが一番重要なもの。今ソフトウェアを全て外注しているので、会社に残る付加価値というのがあまり大きくない。これを内製化することで、まずは社内に取り込んでいきたい。なおかつAI・ソフトウェアは海外で作られることが多いから、日本国内に付加価値を残す狙いもある。

――サービスロボット(掃除・配膳)累計出荷1万台。次の目標は?

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
2027年までに10万台を出荷したい。(今までの10倍か)はい。売り上げは1000億を目指している。

――今、1兆円企業を目指していて、目標額の10分の1はロボットで稼ぐということか?

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
はい、そうなる。できると思っている。

――ロボット事業は大山さんが社長になってからの事業だが、どういう思いで?

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
企業活動は社会課題の解決のためにあると考えている。ロボットというのはその最適解になるのでは。

アイリスオーヤマは、これまでも社会の課題を解決し、成長に繋げてきた。

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
こちらは「サービィ」という配膳ロボットで飲食店中心に使ってもらっている。

顔認証で非接触のゲートや、アルコールチェッカーも開発した。

アイリスオーヤマ 大山社長に聞く 価格転嫁・円安・脱中国の課題は?

売上1兆円を目指すアイリスオーヤマの大山社長に、日本企業が直面する課題を聞いた。

――価格転嫁。値上げの難しさとは?

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
できる商品と難しい商品にはっきりわかれている。家電は難しい。まだまだデフレマインド。安くていいものを買う客は多い。ただ食品や消耗品というものは日々必要なもの。これが値上がりしてしまったら仕方がないと許容の幅が大きい。

――加速する円安については?

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
非常に厳しいと思っている。日本の価値がどんどん下がっている。企業としてもコストアップに繋がる。大企業を中心にベースアップ等の賃上げが進んでいるが、その賃上げ効果が全部打ち消されてしまって消費者の所得が伸びないとなればどんどん日本国内が貧しくなっていく。ここまで過度な円安は日本にとってメリットがない。何とかしてほしい。

――経済安全保障の概念も入ってきた。サプライチェーン 脱中国の対応は?

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
今は中国にある工場を日本にそのまま持ってくることは難しい。直接持ってくるのではなく、日本国内に業態転換した投資をしようということで、今、国内では盛んに米の工場、そして水の工場を建設している。投資の国内回帰と呼んでいて中国への投資金額は控えていって、日本国内に投資をしてチャイナプラスワンという形でASEANから商品の供給を受けるようシフトしている。

カリスマ経営からチーム経営へ 目指す売上高1兆円

――社長就任から約6年。カリスマ経営者だった父親(アイリスグループ 大山健太郎現会長)から引継ぎ大変だったと思うが、目指してきたものは?

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
アイリスオーヤマのDNAを出来るだけ長く続けたい、いかなる時代・環境においても利益の出せる会社、永遠に存続する企業を目指している。

――アイリスオーヤマ。父親の代との違いは?

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
商品構成も大きく変わったし、カリスマ経営からチーム経営に変わりつつある。良くも悪くも同族経営だったアイリスオーヤマから、チーム経営で新しい役員もどんどん増えている。チームでものを考えて、より多角化できるような企業に変わりつつある。

――元々売上1兆円が大きな目標だったが、2年連続減収になっても変えないのか?

アイリスオーヤマ 大山晃弘社長:
変えません。コロナがあっていろいろと社会情勢が大きく変わってそのおかげで成長できた時期もあるし、苦戦した時期もあったと思うが、我々は基本的には成長志向。日本国内だけではなく、海外でも事業広げてより世界中の皆さんに、我々のソリューションを使ってもらいたい。それを通じて社会に貢献したいと考えているので、まだまだ1兆円は諦めない。

(BS-TBS『Bizスクエア』 4月27日放送より)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。