プロ野球ウエスタン・リーグのくふうハヤテベンチャーズ静岡は、11月2日、3日に2025年度のトライアウトを実施した。計80人のアマチュア選手に加え、2日目にはNPB所属経験のある選手8人が参戦。創設初年度、2選手がNPB12球団に移籍、ドラフト指名を受けたとあって、NPBの舞台での活躍を目指す選手たちが「次は自分だ」とばかりに必死のアピールを行った。(SBSアナウンサー松下晴輝)
元NPB勢では、地元・静岡商高出身でDeNAから戦力外を受けた髙田琢登や西武から戦力外を受けた高木渉の姿もあった。静岡商高から2020年ドラフト6位でDeNAに指名された髙田は、この4年間で一軍のマウンドに上がることはなく、ファームリーグでも勝ち星はなかった。4年目のシーズンオフとなるこのタイミングで球団から戦力外通告を受けた。
元DeNA髙田琢登「カウントを稼いで三振を取るのがやりたい投球」
2日目に行われたシート打撃で、髙田は3人と対戦。先頭を二ゴロ、次打者は二飛、3人目は左飛と、3人ともしっかり抑えてみせた。トライアウトを終えて「右打者のインコースにキッチリと投げ切りたいと思っていたが、打者3人とも左打者だったので、三塁側に強いボールを投げるという意識で投げていった」と語った髙田。
報道陣から投球の出来を問われると「60点、70点ぐらい。まだまだ、スピードを出せると思うし、もっとストレートで空振りを取ったり、ファウルを取って、カウントを稼いで三振を取るってのがやりたい投球なので」と厳しめに評した。
静岡商高時代は、父で監督の晋松さんの下でプレーし、1年夏からベンチ入り、3年夏にはエースとして、地方大会ベスト4進出の原動力となるも、甲子園出場はならなかった。3年夏の最後の勝利を飾った準々決勝の舞台こそ、ちゅ〜るスタジアム清水(当時は清水庵原球場)。思い出深い球場でのプレーに髙田は「実家も清水ですし、よく来ていた球場で懐かしい」とし、同時に野球を通じて親孝行がしたいと改めて現役続行の意思を示した。
この日の夜に行われた日本シリーズ第6戦で、古巣DeNAは、快進撃の末「史上最大の下剋上」を達成。26年ぶりの頂点へと駆け上がった。元チームメイトが果たした偉業も自らの活力へと変えて、自身はこれから控えるプロ野球12球団合同トライアウトに照準を合わせている。
地元ゆかりのアマチュア勢も名乗り「挑戦することで夢を与えていきたい」
アマチュア勢では、浜松工高出身で今季は四国IL/徳島でプレーした強打の左打者・塩崎栄多をはじめ、独立リーグからNPBの高みを目指す選手も多い。さらに、外国籍選手の受験者も3人いた。
中でも注目は、知徳高校の前主将・松本陣内野手。高校通算17本塁打の長打力が武器で、今夏も2本塁打を放ち、母校の8強進出に貢献した。「ずっと挑戦したいと思っていた」というプロの舞台に向けて、10月行われたドラフト会議に向けてプロ志望届を提出するも指名漏れ。来年以降のプロ入りを目指して、地元に2024年誕生したくふうハヤテでのアピールを目指す。
一般公開された2日目には、広島から育成1位指名された高校の同期、小船翼も応援に駆けつけ、同期の挑戦を見守っていた。シート打撃では、3打席無安打2三振に終わるも、地元出身の若き有望株に、球団関係者はたしかな将来性を感じていた。
松本は「高校生相手に戦ってきた自分にとってはレベルの高い相手だったが、自分のアピールのスイングや声という部分は出せた」と振り返り、今後はイースタン・リーグのオイシックスも受験し、不合格の場合は大学進学を検討している。
その他、静岡県勢としては聖隷クリストファー高出身で、現在は社会人野球・山岸ロジスターズでプレーする小杉康介の投球に注目が集まった。3年前、大学3年の秋からアンダースローに転向した小杉。下手投げへの転向も、すべてはプロの舞台での挑戦に向けた取り組みだ。
シート打撃で打者3人に対し、1安打を許すも、牽制で刺すなど猛アピール。「静岡でここまで育ててもらったという面で恩返しにもなるし、挑戦することで子どもたちにも夢を与えていきたい」と地元球団のユニフォームに袖を通すことへの期待感とともに、決意を語った。
くふうハヤテは、チームとして「育成・再生しながら勝つ」という運営方針を掲げており、今季のメンバーも半数以上が2023年のトライアウトを突破したメンバー。先日のドラフト会議で、阪神から育成3位指名を受けた早川太貴投手もその一人だ。来季以降のチームの命運を握る重要な選考だけに、赤堀元之監督をはじめ、球団関係者は1人でも多くの「原石」を探し出そうと、テスト生の一挙手一投足に熱い視線を送り、会場には熱心なファンが多く集まった。
第2、第3の早川は誕生するのか、トライアウトの結果は月末をめどに個別に伝えられる見通しだ。
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