自室のアパートで、死亡した妻の遺体を1か月あまり放置したとして、死体遺棄の罪に問われている男の裁判。夫はなぜ妻の遺体を放置し続けたのか…裁判で語られたことは?
死体遺棄の罪に問われているのは、島根県安来市に住む無職の男(78)です。
起訴状などによりますと、男は同居する妻が自宅のアパートで死亡しているのを見つけたものの、1か月あまりにわたって放置したとされています。
「臭いにおいがする」とアパートの住人から連絡を受けた管理人と不動産会社の社員らが7月21日に男の部屋を訪問。中に入って確認したところ、キッチンのシンク前に、服を着た状態で仰向けに倒れている遺体を発見し、事件が明らかとなりました。
9月26日の初公判で、裁判長に、起訴内容に間違いがあるかと問われた男は「ありません」と認め、弁護側は公訴事実については争わないとしました。
裁判の中で検察は、男が妻に16年前から肉体関係を拒絶されていたこと、金銭の使い方に不満を感じていたこと、食事の準備をしてもらえなくなっていたことなどの怒りから、6月に妻が自宅のダイニングキッチンで倒れているのを見つけたものの、「そのまま死ねばいい」と放置。「死んだ後の妻を放置するのはこれ以上ない仕返しだったと思う」と男が話していたと指摘。
また、管理人らが男の部屋を訪ねたときには、応答がなかったためマスターキーで部屋に入ったところ、妻の遺体には大量の虫が付いていて、その横で男はテレビを見ていたなどと述べました。
11月5日に開かれた公判では、被告は黒のジャージに紺のジャージ生地のズボン、白い不織布の立体マスクをつけ、出廷しました。髪は白髪で肩まで伸びていました。
今回の公判では、まず被告人の更生を支援する県のコーディネーターが証人として出廷し、被告人の更生支援計画書が作成されたことを報告。その後、この証人に対して弁護人・検察官が質問しました。
弁護人→証人への質問
【Q】更生支援書はあなたが作成しましたか?
ーはい
【Q】あなた単独ではなく、周囲の協力を受けて作成しましたか?
ーはい、作成した支援書を被告人の出身地の社会福祉協議会や県の福祉課の担当者などにもチェックしてもらいました
【Q】支援書の中に、本人の面談と記載がありますが、行いましたね?
ー3回行いました。
【Q】今回の支援書の内容、支援の進め方について、本人の意思確認も行いました
ーはい
【Q】アセスメントを行ったと記載がありますが、これについて教えてください。
ー被告人本人の健康状態や日常動作、言語能力などを考慮して作成しました。
【Q】アセスメントによる今回の犯行の要因は?
ー被告は16年以上にわたる家庭内別居状態にあり、孤独で、また家事や家計の管理を、被害者である妻がすべて行っていて、自由に使用できるお金がありませんでした。これにより被告は被害者に強い憎しみを抱いていました。
【Q】どうして今回死体を遺棄することになったのでしょうか?
ー被告人は孤独で、相談相手がおらず、親族や他人に関わらずSOSが出しづらい状況になっていました。
【Q】部屋の片付けも難しかったのですか?
ーはい
【Q】いわゆるセルフネグレクトといった状況だったのでしょうか?
ーはい、そういう表現で間違いないかと思います
【Q】支援計画は短期、中期、長期と分かれていますが、どのように進めていくのですか?
ーまず短期では、被告は今回の事件で住居を失っていますので、住居の確保を進めていきます。これは、養護老人ホームへの入居に向けて動いています。また住居であったアパートにあった荷物は民間の倉庫に移しています。今後は中長期的に入居保険制度の加入などを進めていきます。
【Q】短期の計画で住居を探しているのはどうしてですか?
ー市を通して養護老人ホームを探しています。こちらでは、3食の給食サービスに入浴、レクリエーションなど他者とのコミュニケーションを通じて、他者へ思いを伝えられるようになると考えています。
【Q】あなたは支援員として中長期的に被告人に関わっていきますか?
ーはい
【Q】支援計画については、既に市などにも相談していて本人も同意しているのですね?
ーはい
検察官→証人への質問
【Q】入居の確約は取れているのですか?
ーまだできていません。早ければ今月中に行える予定です。
【Q】入居希望者が今回の事件の被告人であると先方は認識しているのでしょうか?
ーはい、市を通していますので、そのあたりもお伝えしてあります。
【Q】今回の入居の費用は誰が持つことになるのですか?
ー本人です。本人の支払う金額は、本人の年金によって定まっていくことになります。
【Q】入居前に裁判が終了した場合はどうするのですか?
ー親戚に頼ったり、シェルターなどに居住してもらいます。
【Q】親戚に頼れるのですか?
ー2家庭あります。
【Q】その親戚への連絡は取っているのですか?
ーまだ取っていません。
証人質問の後、弁護側・検察側から被告人への質問が行われました。
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