県内の書店に、ずらーっと並ぶ「県産本」。出版が盛んな沖縄では確立されたジャンルです。今回取材したのは、県産本のなかでも「琉球史」に特化したイラストレーターとして活動する和々さん。史実に基づいて描いたものから、子どもたちも楽しめる作品まで、イラストで地域の歴史や文化を伝える和々さんの作品の魅力に迫ります。(11月8日 RBC 『NEWS Link』にて放送)
琉球史の知識をいかし、図解や考証からエンタメまで幅広いイラストを手がける和々さん。取材の日は、世界遺産である中城城跡にやってきました。同じ世界遺産の勝連城跡を見渡せます。
史跡ガイドも務めている和々さんに、中城城跡を案内してもらうと…
▽和々さん
「(遠くに見える)勝連城。すごく分かりやすい一直線の距離ですね。史跡に来て一番いいのは、距離感がわかることなんですよ」
「刻印石っていうのがあって。この刻印が実際に見れる場所なんですよね」「これ。Fですね。F形」
築城されたとされる15世紀前半ごろ、作業に携わった人たちが、何らかの目印にと刻印したものが今も残っており、歴史ロマンを肌で感じることができます。
和々さんが琉球史に興味をもったきっかけは、16年前に観劇した「肝高の阿麻和利」でした。
「子どもたちのエネルギーとか、ダンス、演舞とか」
「あの100人あまりのエネルギーに、“何だ、これは” って。すごく圧倒されたのを覚えています。そこから、阿麻和利ってどんな人なんだろうとか、勝連城に行ってみようかとか」
琉球史にどっぷりハマり、沖縄歴史検定1級、さらに博物館学芸員の資格を取得。
ブログで史跡紹介やイラストを発信したところ、琉球歴史研究家の上里隆史さんから声がかかりました。
▽上里隆史さん
「僕は沖縄の歴史を皆さんに伝えようと文章をいろいろ書いたんですけれども、やはり百聞は一見に如かずという言葉の通り、イラストやビジュアルで伝えると、多くの人の印象に残って、そしてたくさん知ってくれる」
「和々さんのイラストと組み合わせることで、沖縄の歴史の普及にさらに一役買ったんじゃないかなと思っています」
和々さんは、2012年に出版された「琉球戦国列伝」でイラストレーターとして本格デビューしました。
今では、県や市町村から歴史のイラストや、グスクの御城印などのデザインも手がけています。古琉球時代の人物の肖像画は、ほとんど残っていないそうですが…
▽上里隆史さん
「例えば、文献に鎧の形式だとか、中国に贈った刀の様式はどのようなものだとか、いろんな情報が書かれているんですね。ただ絵として残されていないので多くの人にイメージがなかったと」
「そのまとまった情報をこちらで整理をして和々さんに伝えて、だいたいこういう形で再現をしてほしいということで」
専門家が持つ知識と情報が、和々さんの画力でかたちになり、琉球史というジャンルの魅力につながっています。
▽和々さん
「(阿麻和利の)顔つきに関しては、完全に私の想像ですが、小札(こざね)という鎧の胴の部分が出ていたり、兜の鍬形(くわがた)という飾りの一部が実際に出ているので」
「それをかなり意識して入れてビジュアル化したりはしていますね」
今まで琉球史に興味がなかった層にも “刺さる” ことを狙った作品も出版しています。考証に基づいた描き方だけではなく、あえてキラキラした描き方も。
和々さんの推し、武将の大城賢雄をアレンジして描くと…
▽和々さん
「彼はすごく強かったと言われているので、強そうに。ちょっとクールな感じのイメージで描いていくなかで、ちょっと黒をベースに」
「琉球史は学校で習わないから…とよく聞きますけど、今の子どもたちって、「総合的な学習の時間」での調べ学習や夏休みの宿題だったりで、郷土を学ぶ機会って、あるんですね」
「子どもたちが手に取りやすいような本・イラストから、何かちょっと読みやすそう、見やすそうというふうに、子どもたちのきっかけになってくれたら嬉しい」
幅広い世代に琉球史の魅力を届ける和々さん。11月30日からは、恩納村で作品展が開催されます。ぜひ足を運んでみてください。(取材 照屋貴奈)
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