空き店舗がそのままになったり駐車場に変わったりする中で、長野市の閉店したボタンの専門店を、人がつながる新たな場所に生まれ変わらせようと奮闘する大学生たちがいます。
長野市の北石堂町に9月にオープンした新しい施設。
運営しているのは、長野県立大学の築山秀夫教授のもとで地域社会学を学ぶゼミ生18人です。
長野県立大学築山秀夫教授:
「ちょうど2年ぐらい前に(まちづくり会社から)長野の中心市街地の活性化ということで、遊休不動産を活用してにぎわいを創出することをやりたいんだけど、学生さんと一緒に何かできませんかねっていう話をいただいて」
2年前、空き店舗や空き家が多くなってきた中心市街地を活性化させようと、居場所づくりを始めました。
その中で出会ったのが、おととしの4月に閉店した「ボタンのいとう」。
ボタンを専門に扱っていた店舗の1階を改装して作ったのが…
「まちかど図書館ぼたん」です。
コンセプトは、「本を介して人と人とがつながる」。
取り入れたのは、「一箱本棚オーナー制度」です。
長野県立大学 築山秀夫教授
「本棚が45センチ30センチぐらいなんですが、これが今110いくつぐらいあるんですけど、それをひと月2000円で借りていただいて、自由に自分の関心のあるものを置いていただいて運営していく」
「一箱」あたり月額2000円のオーナーになると、横およそ40センチ・縦30センチの一区画におすすめの本や自分の書いた本など好きな本を並べることができます。
一方、利用者は、入会金300円を支払うことで、一か月に5冊まで本を借りることができます。
本棚はゼミ生が地域の人と協力しながら手作りしました。
オーナー、一人ひとりのこだわりが詰まった「一箱」です。
県立大学3年 千野祐里奈さん:
「この規模感でのこの一箱でのおすすめっていうものがあるので、そういう面ではあまり本に関心がないというか、あまり本を読まない人でもちょっと読んでみようかなって思ってもらえるような取り組みであるのかなって思います」
この「箱」を通じオーナー同士のつながりもできるといいます。
長野県立大学築山秀夫教授:
「オーナーさんは自分の関心のある本を置いている訳ですけど、ここにレイチェル・カーソンの沈黙の春という本が置かれて別のオーナーさんがそれをご覧になって、その原書持っているということで、こちらに沈黙の春の原書を置かれているっていうようなことがあります。そうやって自然に本を通して、人々がつながっている、緩やかにつながっているというのが今の状態かなと思っています。」
図書館の運営はゼミ生たちが当番制で行います。
ゼミ生は、会議やほかの県で同じような取り組みをしている図書館の視察などを行い、日々、運営の仕方をアップデートしています。
訪れた人に感想を書いてもらう「来館ノート」もそのひとつ。
県立大学3年 千野祐里奈さん:
「オーナーさん同士だったり、利用者さん同士が繋がれるきっかけみたいなものがあるといいなと」
中を覗いてみると、「まちなかに自分の本棚を持つことができてうれしいです」
、「娘のトリセツ、先週借りて読みました。自分には娘はいませんが楽しく読みました」といった学生へのメッセージた書き込まれています。
この図書館、本の貸し出しだけではなく実は、前の店が扱っていたボタンやリボンなどの販売も行っています。
その数はおよそ600種類!
県立大3年生小原芳野さん
「すごくびっくりしました。こんなにいろいろな種類のボタンがあるのは初めてだったのでワクワクしますね。ボタンだけではなくて布だったり、リボンもいろんな種類があるので、新しい世界を知った感じで」
元店主で23年7月に他界した伊藤武さんが残したボタンや布、リボンです。
「ボタンは洋服の顔」が口癖だったという伊藤さん。
現在の大家で、娘の直美さんは、学生たちが父が大切にしていたボタンを残してくれたことがうれしかったと話します。
伊藤さんの娘直美さん:
「ボタンの名前を残していただいたのが一番、外観が古いので変えたとしても、名前が残っているのがありがたいなと」
県立大3年生 小原芳野さん:
「ボタンのいとうさんの思いであったり、今までお付き合いされていた方々がいらっしゃったということで、そういう背景も大事にしていきながら、地元とのつながりを密着させて行けたらなと思って、図書館とボタンの販売の両立を頑張っています」
図書館ではボタンの購入に来た人が本に興味をもったり、利用者がボタンを買ったりするつながりも生まれています。
県立大学3年千野祐里奈さん:
「この図書館を通していろんな人の居場所になればいいなと思っていて、私はこの図書館のお店番に来たりするのが結構好きで、自分自身もこの場所が居場所になりつつあるんですけどそういう感じで、この図書館居心地がいいなだったり、いろんな人の心のよりどころだったり、そういうものになっていったらいいなと思っています」
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