今空前のブームとなっている北海道土産の定番「木彫りの熊」。全国から人が集まる木彫り熊の故郷・八雲町では、鮭を咥えない“かわいすぎる熊”や“オシャレすぎる熊”たちに出会えます。
“木彫り熊”目当てに全国から
食堂に入ると沢山の木彫りの熊に出迎えられ、婦人服店でも、服と並んで木彫りの熊。
和菓子店の店先には、どら焼きを首にぶら下げた親子の熊が…。
町のいたるところに木彫りの熊があるのは、北海道・八雲町。函館の北約80kmのところにある、木彫り熊発祥の地です。
中でも、全国のファンから“木彫り熊の聖地”と呼ばれているのが喫茶店の『ホーラク』。
店内の壁や棚にびっしり並ぶ木彫り熊は約120種類以上あり、鮭を咥えた定番の木彫り熊はほとんどなく、「お座りする熊」や、「ウイスキーの小瓶を担いだ熊」など、珍しいデザインの熊ばかり。この熊を見に、全国からお客さんが来るといいます。
『ホーラク』店主 山戸広史さん:
「きのう名古屋から来た人はリピーター。最初1人で来たんだけどね。そしてね彼氏ができてね、俺ば見せに来たんだべか(笑)」
実はこの喫茶店、珍しい木彫りの熊を見られるだけじゃない、「聖地」と呼ばれる所以があるんです。それは…
東京から来た女性:
「熊に触れるっていう。好きなのは絶対買えなさそうな値段ですけど」
女性が嬉しそうに抱いていたのは、マニアの間で“お宝”と呼ばれている、作家・柴崎重行さんの作品。毛を細かく1本1本彫るのではなく、ミノなどでカットした“直線的な面”で熊を表現する作風が特徴です。
八雲の木彫り熊には、このような“お宝”が他にもあります。
骨董品・古美術の買取を行っている江戸市川の鑑定士・室園義孝さんによると「八雲町の木彫り熊はコレクターの中では人気が高い」とのことで、巨匠・茂木多喜治さんの作品では20万円の値がつくものもあるといいます。
「オシャレでカワイイ」八雲の木彫り熊
それにしてもなぜ、八雲町の熊が人気なのか?
その理由を、木彫り熊専門ショップ『kodamado』の青沼千鶴さんに聞きました。
青沼さん:
「八雲の熊は主に鮭を咥えてない熊。皆さん熊のバリエーションにビックリするんですよね。84歳から熊彫りを始めた増田皖應(きよたか)さんの作品をSNSで発信したら、バズって、すごい人気になって、みんな欲しい欲しいって」
増田さんの彫る熊は、とにかく愛くるしい熊。
つぶらな瞳で笑いかけるものや、おどけた様子で見上げるものなど、1本1本掘られた優しい毛並みと丸みのある体で“かわいすぎる”と人気なんです。
他にも、八雲で作られた木彫り熊は、これまでの概念を覆すほどオシャレでインテリアにもぴったり。『BRUTUS』などの雑誌で特集が組まれたり、人気ファッションブランド『BEAMS』とのコラボも実現しています。
木彫り熊のルーツは「100年前のスイス」
では、なぜ八雲の熊は鮭を咥えていないのか?
そのルーツを探るため、町にある『木彫り熊資料館』に行ってみると、見せてくれたのが古いスイス製の木彫りの熊。
手のひらサイズで、つぶらな瞳がカワイイこの熊が、八雲の木彫り熊の原点です。
およそ100年前の、1922年。徳川義親が旅行先のスイスで木彫り熊を購入。
帰国後、その製作を冬の間農作業が行えない農民に、副業として勧めたのが始まりです。
資料館には、100年前に作られた第1号の木彫り熊も残っていて、スイス製のものと比べると、目が小さめで、カワイイというよりはちょっと勇ましい感じ。
『木彫り熊資料館』学芸員 大谷茂之さん:
「最初は手のひらに乗るようなサイズのもので、鮭は咥えてなくて、すごくシンプルな形。スイスの熊そのままではなく、日本人の感性にあったものを作るようになっていきます」
例えば、スイス製の「座ってフルートを吹いている熊」をモデルに作られたのは、「座ってとうもろこしを食べる熊」。熊が座る構図は同じですが、フルートがとうもろこしに変わっています。
他にも、バットを持っていたり、スキーをしていたりと、昭和初期から八雲の木彫り熊は、遊び心あるデザインだったとのこと。
よく知られる「鮭を咥えた木彫りの熊」は別の場所から広がったものだといいます。
大谷さん:
「1950~60年代くらいに北海道の観光ブームが起きたのですが、その頃は木彫り熊の生産の中心が八雲じゃなくて旭川とか他の地域に移っていた。そこで作られたのが鮭を咥えた木彫り熊」
当時、北海道土産として大人気だった鮭を咥えた木彫りの熊。
ちなみに、鑑定士の室園さんによると「鮭を咥えているものは、ほとんどが廉価版、大量生産品」とのことでした。
俳優・成田凌が愛でる熊の値段は?
スタジオでは、俳優・成田凌さんが持ってきた「木彫り熊」を鑑定することに。
自分では持っていないので、主演する映画『スマホを落としただけなのに 〜最終章〜 ファイナル ハッキング ゲーム』のチーム全体に呼びかけて探してきたとのこと。
「映画スタッフが北海道旅行で買ってきた」と紹介したのが、木に3頭の熊がよじ登っている、高さ1mほどの大きな作品。14万円ぐらいするものを7万円で買ってきたのだとか。
成田さん:
「まだ作り途中の作品で、未完成なんだけど頼んで買わせてもらったと。でもめちゃめちゃいいですよね。もしかしたら値が上がっているかも」
成田さんも「欲しくなった」というこの木彫り熊。
鑑定してもらうと、まだ製作途中なので値がつかないとのことで、まさかの買取価格0円。
この結果に成田さんは、熊をヨシヨシとなでながら「大丈夫。大丈夫。価値はある」と慰めるように話しかけていた。
(THE TIME,2024年11月1日放送より)
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