2023年4月に当時54歳の男性を殺害した罪などに問われている男性の次男と長男の妻の裁判員裁判が11月5日、仙台地方裁判所で始まった。初公判で見えてきたのは、長男の妻を頂点とした「一族の異常な関係性」だった。

右腰をひと突き、のどかな町で起きた凄惨な殺人事件

2023年4月17日午前7時頃、宮城県柴田町の住宅の玄関先で男性が倒れているのを通行人が発見した。倒れていたのはこの家に住む会社員の村上隆一さん(当時54歳)。腰から血を流して死んでいた。宮城県警は殺人事件と断定し、捜査本部を立ち上げて殺人犯の行方を追う。

それから約4か月後、殺人容疑で逮捕されたのは角田市の無職・村上直哉被告(25)と村上敦子被告(48)。※年齢は11月5日現在のもの

直哉被告は殺害された隆一さんの次男、敦子被告は隆一さんの長男の妻だった。2人は殺人の罪で起訴されたほか、凶器の刺身包丁の処分を依頼した証拠隠滅教唆、複数人で美人局を行った詐欺と詐欺未遂の罪にも問われている。

すぐに浮かび上がった「不審な火災」、そして「次男の名前」

事件後、現場付近に駆け付け取材を行った記者、すぐに「あること」がわかった。事件の約2か月前まで、隆一さんは柴田町ではなく隣の大河原町に住んでいた。

そして、当時住んでいた家は火災で全焼していたのだ。消火にあたった消防団員の男性は、現場にいた隆一さんの長男がこんなことを話しているのを聞いたという。

「次男の直哉が灯油をこぼして線香の火が引火した」

家の燃え方は激しく、男性は「灯油であそこまで家が燃えるのか」といぶかった。

この不審な火災については、大河原町も調査を行っていた。調査結果は、「こぼれたガソリンが気化し、線香の火が引火した」というものだった。

その後も隆一さんの友人や知人、地元の人に取材を重ねるたびに、直哉の名前が多く登場した。地元では、「次男・直哉が怪しい」と噂が立っていたのだ。

次男と長男の妻、隆一さんの葬儀に参列

隆一さんの葬儀が行われたのは、4月20日。村田町の葬儀場には、隆一さんの親族と思われる人たちや大勢の弔問客に混じって、次男・直哉被告と長男の妻・敦子被告の姿もあった。

弔問客が帰ると、2人を含む家族と親族は通夜のため葬儀場の奥へと入っていった。

一夜明け、葬儀場の玄関先。コーヒーを片手に外に出てきた2人は何食わぬ顔で、たばこを吸った。時間をおいて、たばこを吸いに何度も外に出てくる。隆一さんの殺害からわずか4日後のことだった。

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