2025年1月、全国の高校生たちが育てた和牛の肉質などを競う「和牛甲子園」に宮城県農業高校が出場します。最先端の技術も取り入れながら初の頂点を目指す「高校牛児(ぎゅうじ)」の熱き挑戦に密着しました。

われら「牛部」!

宮城県名取市にある県農業高校。放課後、牛舎には生徒20人ほどが集まり搾乳や餌やりをしています。

県農業高校3年 牛部部長 星碧虎(ほし・あおと)さん:
「牛部(うしぶ)という部活動で牛が大好きな人たちが放課後に集まって牛を管理する」

牛部では、乳牛と和牛合わせて40頭を世話していて部長の星さんら3年生は、ひと際立派な和牛を担当しています。

県農業高校3年 星碧虎さん(牛部部長):
「スズゴロウといいます。この牛は来年1月に東京で開催される和牛甲子園に出します」

スズゴロウを最高ランクの肉質へ

和牛甲子園は、全国の農業高校の生徒が育てた「和牛の肉質」と「飼育管理の工夫」を競います。県農業高校はこれまで3回出場しましたが、上位入賞には届いていません。スズゴロウは最高ランクの肉質=「仙台牛」を目指しています。

県農業高校3年 星碧虎さん(牛部部長):
「完璧に仕上がっている。(特に優れた点は?)体の長さは短いが腹の深さが特徴体の一番上から下までの長さ=深さ、深ければ深いほど中身がつまっている」

星さんたちは「環境保全」にも力を入れています。その一つが、牛のエサ=稲わらです。

プラスチックを使わない環境にやさしい肥料を開発し、オリジナルの稲わらをつくったのです。その特徴は・・・。

牛の胃を「ツンツンする」?

県農業高校3年 星碧虎さん(牛部部長):
「新しい肥料でつくった稲わらは茎が硬くなったので、これでルーメン(牛の一つ目の胃)をツンツンツンと刺激することで食欲が増進する。飼料効率が3%増加したのも確認できたので、環境保全をすることで牛も経営的にも良くなるのではないかと」

また、こんな研究も…。牛舎のところどころにパイプのようなものが取り付けられています。実はこれ…

県農業高校3年 星碧虎さん(牛部部長):
「このパイプの中に2つの測定器が入っていて二酸化炭素とメタンガスの量を測定している」

牛のゲップを測定しどうするのか?

牛が出すゲップを測定し、二酸化炭素とメタンガスの排出量を調べているのです。牛のゲップに含まれるメタンガスは二酸化炭素の25倍もの温室効果があるとされ環境への影響が懸念されています。そこで星さんたちは、メタンガスを抑制するエサを牛に与えて牛舎内の濃度を測定・記録し、その効果を確かめました。

県農業高校3年 星碧虎さん(牛部部長):
「(記者:エサを使わないとどのくらいの数値になる?)1日400ppm。簡単に言うとここ(PC画面が)が400になる(記者:だいぶ減っていますね・・・)」

測定を続けたところ、最大30%のメタン削減が確認できたということです。

次世代放射光施設も使って何をするの?

和牛甲子園で勝つために。星さんたちは最先端の科学技術も活用しました。

訪れたのは、仙台市にある次世代放射光施設「ナノテラス」。放射光と呼ばれる強力なX線で仙台牛とオーストラリア産牛肉の肉質を測定することに。星さんたち牛部のメンバーが、それぞれ「モモ」の部位をはさみで切って装置の中へ。

数分後、モニターには肉の断面が映し出されました。白い部分が赤身、黒い部分が脂です。仙台牛とオーストラリア産の断面を比較した星さんは…。

県農業高校3年 星碧虎さん(牛部部長):
「一目瞭然で仙台牛は脂が多いというのが特徴でまさに見える化できている。今まで牛肉は表面上でしか見えていなかったので内部まで見られたことで赤身と霜降りのバランスでおいしさがどのくらい変わるのか今後見える化できると思う」

高校生がナノテラスを活用するのは県農業高校が初めてで、和牛甲子園に向けて貴重な体験となりました。

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