1999シーズンからスタートしたサッカーJ2リーグ。26代目のチャンピオンに輝いたのは、“サッカーどころ”静岡市をホームタウンとする清水エスパルスでした。いわゆる“オリジナル10”として、Jリーグ草創期から戦い続けた清水がリーグ戦のタイトルを獲得するのは、J1、J2を通じて、1999シーズンのJ1セカンドステージ以来、実に25年ぶりとなります。

この10年間で2度のJ2降格を経験した清水ですが、公式戦のタイトル獲得は、リーグステージ優勝1回、天皇杯1回、ヤマザキナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)1回。さらに、リーグ王者と天皇杯覇者が戦うスーパーカップでは、2001年、2002年と連覇を果たしたほか、アジアチャンピオンズリーグの前身となるアジアカップウィナーズカップでも1度優勝していて、計6度、カップを掲げています。

ただ、そのいずれもがアウェー、もしくは中立地。“聖地”日本平では、クラブ設立以降、ただの一度もサポーターの前で勝利を挙げ、優勝の証を掲げた経験がありませんでした(1999シーズンのセカンドステージでは、最終節で優勝セレモニーが行われましたが、ゲーム自体は柏に敗戦)。

J1リーグ年間王者に贈られる「シャーレ」に最も近づいた1999年のチャンピオンシップもVゴール勝ちを収めながら、最後の最後で掲げることはかないませんでした。さらに2016シーズンJ1復帰を決めたのもアウェー・徳島。極端なほどの“外弁慶”といわれてきました。

「エスパルスのスタジアムはこうだ」と歴史を紡いでいきたい

優勝だけではありません。ここ数シーズンは、「アイスタで勝てないエスパルス」が定着。過去5シーズン、IAIスタジアム日本平で勝ち越したのは、2度目のJ2リーグ1年目となった2023シーズン(12勝6分け3敗)のみ。2019シーズンからの4シーズンの通算成績は、18勝18分け31敗、2022シーズンではわずか2勝にとどまるなど、ファン・サポーターの間では、「鬼門」とまで言われる始末。

しかし、今季の清水はまさに“別人”でした。アイスタでの通算成績は、いわき戦も含めると、14勝2分け1敗で勝率は驚異の8割超え。さらに、過去10シーズンで最多となる1試合平均15,342人(いわき戦、国立でのホーム戦を除く)の後押しを背に、「鬼門」を封じる王者の戦いを見せてくれました。

31年間変わらない本場ブラジル仕込みの軽快なサンバのリズムに乗って、年々迫力を増す大声量。決勝点となったコーナーキックの場面、オレンジサポーターが発する「ゴール!ゴール!」の声がスタジアムを揺らす光景は、本場ヨーロッパのスタジアムの雰囲気そのもの。

秋葉忠宏監督も「このスタジアムが作り出す空間や雰囲気、一体感があったからこそ、ホームで無類の強さを誇れたことにつながってると思っている。これを伝統と歴史になるように、5年、10年、30年、50年経とうが『清水エスパルスのスタジアムはこうだ』と言えるように、みんなで歴史を一つ一つ紡いでいきたい」と感謝を述べています。

11月3日、最高気温23.5℃とまだまだ暖かかった日本平で、オレンジ戦士の手によって何度も高々と掲げられた「シャーレ」。1992年のクラブ創設から33年間、待ち続けた瞬間を、ついにわたしたちは目の当たりにしたのです。

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